研究実績の概要 |
アカパンカビはモデル生物としてショウジョウバエに次ぐ古い歴史を持つのにも関わらず、研究代表者らの報告までアカパンカビに感染する菌類ウイルスの発見に至らなかった(Honda et al, Nature comm, 2020)。この長い未発見の理由の一つに、糸状菌アカパンカビの生殖期にウイルスを除去する未解明な分子機構が挙げられる。本研究では、この特殊な分子機構を分子レベルに紐解くことを目的とする。 研究代表者の先行研究により、ウイルス除去機構を担う因子群は生殖期のみに発現していることが示唆されている。そこで、ウイルス感染させた正常株の無性・有性生活環時のRNA-seq解析を行い、上記の条件に一致する因子群候補の抽出を行った。その結果、ウイルス感染で発現が変動する遺伝子のほぼすべてが無性・有性生活環で一致した。免疫を過剰に応答にすることを防ぐ新規遺伝子ZAO-1を欠損させると、生殖期特異的なウイルス除去機構が部分的に機能しなくなることを見出している。そこで上記同様にRNA-seq解析を行ったところ、この欠損株では、遺伝子全体で3割近くの発現が大きく変動することがわかった。これらの解析結果から、当初の計画ではウイルス除去機構を担う因子群を抽出することが困難であることが判明したため、新たな実験系を構築し、ウイルス除去機構を担う因子群の抽出・同定を目指すことにする。
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