研究課題
本研究では、原生生物の捕食圧下において藍藻が劇的な細胞形態変化を生じさせるという現象について、二種類の捕食者-被食者モデルを用いて解析を行い、細胞伸長メカニズム、および微生物生存戦略における意義を解明することを目的としている。先行研究によって観察されていた、捕食圧下における藍藻の形態変化現象の詳細な解析を行い、捕食者と被食者である藍藻それぞれの培養系における増殖および藍藻の形態変化の推移を調べた。また、形態変化を起こした藍藻の形質が安定していることが確認され、遺伝的な変異が関与していることが示されたため、得られた複数の変異株について次世代シークエンサーを用いて変異点の同定を行った。その結果、細胞分裂装置として知られるdivisomeの構成に関わるタンパク質遺伝子や細胞壁の合成、文化に関わるelongasomeと呼ばれる酵素群遺伝子を中心に変異が見出された。また、代表的な変異遺伝子について、単独での遺伝子破壊を行い、直接的な因果関係を証明した。この成果は、淡水性藍藻と海洋性藍藻で共通して確認されたことから、ある種の藍藻に共通した一般性のある現象である可能性が考えられた。一方、変化した形質が捕食抵抗性に貢献しているかを調べるために、単離した藍藻変異株をあらためて捕食者と共培養し、細胞数の増減を調べた。その結果、伸長した変異株は捕食者が存在する条件においても増殖を示し、一定の捕食抵抗性を示すことが明らかとなった。また、捕食抵抗性を示す細胞の増殖を調べたところ、乾燥菌体重量では野生株に比べ、ほぼ同程度であった。
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J Biosci Bioeng
巻: 137 ページ: 245-253
10.1016/j.jbiosc.2024.01.001