研究実績の概要 |
古くからニンニクなどの含硫食品には、様々な薬理効果があることが知られている。しかし薬理効果の活性本体、作用機構に関しては不明な点が多い。応募者らは、不安定で活性な硫黄化合物(活性硫黄分子:RSS)を同定し、高等動物における硫黄に依存したエネルギー代謝(硫黄呼吸)が行われていることを明らかにした。さらにRSSが、抗酸化作用、レドックスシグナル制御、ミトコンドリア品質管理、疾患の発症、予防などに関与していることを示してきた。高等動物において硫黄、RSSの供給源は食品なので、食品中のRSSの存在様式を科学的に評価することが重要である。本申請研究では、食品中に含まれる硫黄、RSSの定量法および、未知RSSの網羅的探索法を確立することを目的としている。 2022年度は、野菜に含まれる硫黄、RSS総量および高反応性RSS量の定量的検出法を確立し、22種類の野菜に含まれる硫黄、RSS総量および高反応性RSS量を報告した(Food Chem,2023)。2023年度は、多数の食品中の硫黄、RSS総量および高反応性RSS量を定量し、ブロッコリースプラウトにRSSが多量に含まれることを見出した。ブロッコリースプラウトのRSSは、発芽とともに増加し、栽培5日目まで増加し続けた。さらに応募者が開発したRSS解析に特化した新規アルキル化剤(N-iodoacetyl L-tyrosine methyl ester:TME-IAM)を用いたターゲッティング及びノンターゲティングポリスルフィドミクス解析法を確立し、システインポリスルフィドが大量に産生していること、40種類以上の新規のRSSが産生していることを明らかにした(Redox Biology 2023)。また、大豆関連の製品のRSS解析も行い、納豆にRSSが豊富に含まれていることを明らかにした(Anal Biochem 2023)。
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