本研究では、アーキアを宿主とした有用セレンタンパク質の量産化と機能未知セレンタンパク質の構造機能解析に向けたプラットフォームを創出することを目指した。まず、好熱性メタン生成アーキアMethanothermococcus okinawensis IH1について、シンバスタチン耐性遺伝子hmgAをマーカー遺伝子とした相同組換えによる遺伝子破壊系の構築に成功した。本系を用いて、遺伝子欠損による遺伝子機能のin vivo解析が可能となった。また、真核生物のSelBホモログであるeEFSecは、SECIS結合タンパク質SBP2を介してSECISを認識することでSec挿入を可能にするが、アーキアにはSBP2ホモログは存在せず、どのようにしてSECISに依存したSec挿入が行われているのか不明であった。そこで、メタン生成アーキアのセレンタンパク質合成および制御機構について、翻訳・転写の両面から解析を行った。アーキアにもSelBのSECIS認識を介在するタンパク質が存在する可能性を考え、その探索を行った結果、約30 kDaのタンパク質が細胞内でM. okinawensis SelBと相互作用する可能性が示唆された。OrthoFinderによりSelBと共起性を示す遺伝子を探索したところ、Metok_1294がSelBと相互作用し、セレンタンパク質合成に関与する可能性が示唆された。さらに、メタン生成アーキアについて、亜セレン酸に対する網羅的転写変動解析を行った結果、本菌は、セレンタンパク質合成関連遺伝子を亜セレン酸の有無に拘らず恒常的に発現させることで、セレンが供給され次第、速やかなセレンタンパク質合成を可能としていることが明らかとなった。
|