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2022 年度 実施状況報告書

短鎖キチンオリゴ糖の認識を介した植物の生育促進と有益糸状菌識別のメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K19182
研究機関鳥取大学

研究代表者

上中 弘典  鳥取大学, 農学部, 准教授 (40397849)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードキチンオリゴ糖 / 有益糸状菌 / 生育促進 / シロイヌナズナ / リシンモチーフ(LysM)型受容体 / トランスクリプトーム解析
研究実績の概要

植物の細胞外には病原菌だけでなく、単なる内生菌や利益をもたらす共生菌など多種多様な糸状菌が常に存在する。そのため、糸状菌の識別は植物の適切な応答を規定するために非常に重要なプロセスである。糸状菌の細胞壁はキチンにより構成されており、植物は細胞外に分泌したキチナーゼにより生じたキチンオリゴ糖(CO)をリシンモチーフ(LysM)型受容体タンパク質で認識することで、細胞外に侵入してきた糸状菌を認識できる。イネでは短鎖COと長鎖COにより有益糸状菌との共生もしくは免疫が誘導される。また我々の研究により、短鎖COの認識がイネ同様シロイヌナズナでも有益糸状菌の認識と生育促進と関連していると示唆された。本研究では、植物における糸状菌の識別機構の解明を最終目的に、短鎖COの認識とそれによる生育促進と有益な糸状菌の識別がどのようにして起こるのかを、シロイヌナズナを用いて分子レベルで明らかにすることを目的して研究を行った。
“短鎖COを認識するLysM型受容体タンパク質の同定”については、COとの結合解析に用いる大腸菌において8つのLysM型受容体の組換えタンパク質の発現を確認した。“様々な糸状菌を接種した植物の表現型解析”については、有益糸状菌によるシロイヌナズナの生育促進効果を確認した。“トランスクリプトーム解析”については、短鎖COの土壌施用による生育促進について至適濃度を決定すると共に、短鎖CO処理もしくは有益糸状菌を接種した野生型植物についてRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、短鎖CO処理により有意に発現変動する遺伝子の数が非常に限られていた。一方で、有益糸状菌接種により細胞壁の機能に関連する遺伝子が有意に発現変動することが明らかとなった。これは、イネにおいて高分子キチン処理により認められた変化(Takagi et al., 2022)と類似していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

COとLysM型受容体タンパク質との結合解析に用いる予定の実験系では、供試するCOを化学修飾したり、植物において組換えタンパク質を発現したりする必要があるが、技術的な課題もあり、結合解析については着手できなかった。予定していた土壌病原菌を接種した植物の表現型解析についても着手できなかった。

今後の研究の推進方策

結合解析については、大腸菌で発現させた組換えタンパク質と非修飾のCOを用いて結合解析ができるDSF(Differential Scanning Fluorimetry)法を用いて実施する予定である。これにより技術的な課題の解決だけでなく、使用するCOやタンパク質量を減らしたり、多検体のサンプルを一度に解析できたりするようになるため、研究のスピードアップが期待できる。様々な糸状菌を接種した植物の表現型解析については、接種予定の組合せが多いために進捗が遅れているため、土壌病原菌、土壌非病原菌、有益糸状菌を各1つずつ接種した植物での比較解析をまずは実施する。トランスクリプトーム解析については、短鎖COを土壌処理したサンプルにおいて処理効果のばらつきが大きかったことが、発現変動遺伝子の数が限られていた原因であると考えられた。そこで、現在シロイヌナズナの実生の無菌培養の系を用いた実験系を構築しており、短鎖COについては生育促進が確認できた。また有益糸状菌については、他の研究グループにより同様の実験系での接種による生育促進効果が報告されているため、前述の表現型解析も含めて土壌を用いた実験系から無菌培養の系に移行することを計画している。一方で、同時並行でこれまで通り土壌を用いた実験系での試験も継続して実施していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

前述通り、本年度予定していたが着手できていない実験があったため、次年度使用額が生じた。またトランスクリプトーム解析については、野生型だけでなく変異体の植物体も用いてRNA-seqを実施する予定であったが、処理にばらつきが認められたため野生型の植物についてのみ実施したため、必要な受託研究費が少額となり、次年度使用額が生じた。次年度には再度予定通りの献体数のRNA-seqを実施するとともに、本年度未着手の実験も実施するため、本年度に計上していた費用は次年度に全て使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Chitin-induced systemic disease resistance in rice requires both OsCERK1 and OsCEBiP and is mediated via perturbation of cell-wall biogenesis in leaves2022

    • 著者名/発表者名
      Takagi Momoko、Hotamori Kei、Naito Keigo、Matsukawa Sumire、Egusa Mayumi、Nishizawa Yoko、Kanno Yuri、Seo Mitsunori、Ifuku Shinsuke、Mine Akira、Kaminaka Hironori
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Science

      巻: 13 ページ: 1064628

    • DOI

      10.3389/fpls.2022.1064628

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Utilization of the unused resources using nanofibrillation technology in agriculture and its future perspectives2022

    • 著者名/発表者名
      Takagi Momoko、Kaminaka Hironori
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Pesticide Science

      巻: 47 ページ: 56~59

    • DOI

      10.1584/jpestics.W22-23

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ナノファイバー化技術を用いた未利用資源の農業分野での利活用2022

    • 著者名/発表者名
      高木桃子,上中弘典
    • 雑誌名

      高分子

      巻: 71 ページ: 67~68

  • [学会発表] シロイヌナズナにおいてキチンによる全身誘導抵抗性は細胞壁の機能を介して発現する2022

    • 著者名/発表者名
      山縣陽咲子,大澤薫,高木桃子,峯彰,伊福伸介,上中弘典
    • 学会等名
      第31回植物微生物研究会

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公開日: 2023-12-25  

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