研究課題/領域番号 |
22K19184
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻 寛之 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 准教授 (40437512)
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研究分担者 |
児嶋 長次郎 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50333563)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | フロリゲン活性化複合体 / 化合物 / 花成 / イネ |
研究実績の概要 |
フロリゲンは目的とする細胞に到達すると、受容体及び転写因子と相互作用して転写複合体「フロリゲン活性化複合体」を形成する。この複合体が下流遺伝子の転写を活性化して花成を誘導する。本研究ではこのフロリゲンの転写活性化能を標的として、化合物を活用したフロリゲンの機能制御技術を開発するための研究を行う。 これまでに、2万化合物を対象とするin vitroの大規模スクリーニングにより、フロリゲン活性化複合体の形成を阻害する化合物を複数見出した。このスクリーニングでは、in vitroで合成したフロリゲン受容体と転写因子OsFD1のC末端ペプチドを対象とした。両タンパク質に蛍光色素を付加し、これらの相互作用の強度がFRETで解析できる実験系を活用した。得られたヒット化合物の中から植物細胞に取り込まれて作用する化合物を見出すために、二次スクリーニングとして細胞内における複合体系性能の調査を行い候補化合物を得た。二次スクリーニングでは、Split luciferaseを改変した方法をイネ培養細胞で実施する実験系を用いた。フロリゲンとOsFD1の両者を含む複合体が形成された場合のみLuciferaseが構成され、その酵素活性を計測することで相互作用の強度を評価できる。得られた化合物は、植物細胞内においても複合体形成を阻害することが示された。相互作用得られた候補化合物について、実際に植物細胞においてフロリゲン活性化複合体の転写活性化が抑制されるかを調査して、これを可能にする化合物を得た。得られた化合物のうち二種類の分子においては、ウキクサやジャガイモの植物体においても機能することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究では、2万の化合物を対象にin vitroでの大規模スクリーニングを行い、フロリゲン活性化複合体の形成を妨げる化合物を見つけることができた。このスクリーニングでは、in vitroで合成されたフロリゲン受容体と転写因子OsFD1のC末端ペプチドを対象とした。両タンパク質に蛍光色素を結合し、それらの相互作用の程度をFRETによって分析する実験系を活用した。 スクリーニングから得られた化合物の中から、植物細胞内で作用するものを特定するために、細胞内での複合体形成阻害能力を調査する二次スクリーニングを実施し、候補化合物を抽出した。この二次スクリーニングでは、Split Luciferaseを用いた手法をイネの培養細胞で利用した。フロリゲンとOsFD1が含まれる複合体が形成されたときだけルシフェラーゼが再構成され、その酵素活性を測定することで相互作用の強度を評価した。 結果として得られた化合物は、植物細胞内でも複合体形成を阻害することが確認された。相互作用を示す化合物については、フロリゲン活性化複合体の転写活性が実際の植物細胞内で抑制されるかを調査し、それを可能にする化合物を特定した。その結果、得られた化合物の中から、ウキクサやジャガイモの植物体でも機能するものがあることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度特定した化合物は、イネの培養細胞に対して有効であったが、イネやシロイヌナズナの植物体全体には効果がなかった。この結果から、今後の研究では、植物全体に効果を示すような処理方法の改善を試みる。さらに、阻害剤がどの部位で相互作用するのかをより詳細に理解するために、生化学的および構造生物学的な研究を進める。これにより、阻害剤の効果を最大限に引き出す方法を探る。また、化合物スクリーニングの過程で見出した、フロリゲン活性化複合体の形成を強化する可能性のある化合物についても、細胞内での評価試験を実施する。これらの研究を通じて、植物の成長制御に対する新たなアプローチを開発することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究は、主に化合物スクリーニングと細胞を用いたスクリーニング、およびヒット化合物の植物における機能解析に焦点を当て、さらにフロリゲン活性化複合体の生化学的機能についての解析を重視して進めてきた。化合物スクリーニングでは、様々な化合物の生物学的な影響を評価し、有望な化合物を特定するための手法を試みた。。これにより、フロリゲンの作用原理やその生化学的役割について新たな洞察を得ることができた。しかし、化合物スクリーニングの過程で、初めに選択したイネとシロイヌナズナにおける化合物の機能解析が困難であることが判明した。これは化合物の特性上の制約によるものであり、これを克服するためにウキクサやジャガイモ塊茎形成を活用した実験を行った。この条件検討には時間を要した。このアプローチの結果、ウキクサを用いた実験では化合物の植物体における機能解明が可能となり、化合物の効果を確認することに成功した。ジャガイモ塊茎形成も制御することができた。これにより、化合物が植物体にどのように影響を及ぼすか、またそれがどのように植物の生理機能に影響を与えるかを詳細に理解することが可能となった。本成果は論文発表し、ジャーナルの表紙となった。今後はこの方法を活用し、フロリゲンの機能を生化学的に制御することを目指した化合物機能の探求を進める。
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