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2022 年度 実施状況報告書

捕食者コウモリとの相互作用を活用した植物保護

研究課題

研究課題/領域番号 22K19190
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

中野 亮  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (90546772)

研究分担者 青木 元彦  地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部 道南農業試験場, 主査 (60462363)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワード超音波 / 捕食者 / 逃避行動 / アワノメイガ / アブラコウモリ
研究実績の概要

1)アブラコウモリの食性分析と超音波特性
夏季にアブラコウモリの寝床より落下した糞を回収し、糞に含まれる節足動物のDNA断片を次世代シーケンス解析した。節足動物の増幅産物を十分に得られたサンプルについて、シマカあるいはヤブカ、ウンカ類、耳を持たないチョウ目のバクガおよびハマキガ類と推定されたDNA断片が得られた。次いで、飛翔する野外のアブラコウモリの近傍で、アワノメイガのメス成虫を放飼した。アブラコウモリは飛翔するアワノメイガを追跡し、鼓膜を破壊した個体の90%以上が捕食された。一方、鼓膜を破壊しなかった個体すべては、追跡するアブラコウモリから逃避することで捕食を回避した。すわなち、アワノメイガは、捕食危険度の高いアブラコウモリの発する超音波を検知すると、捕食回避に有効な逃避行動を誘起することを確証した。アブラコウモリの発する超音波も録音し、エサの探索から捕食に至るまでの超音波の時間構造を特定した。

2)チョウ目害虫の防除に有効な超音波
アブラコウモリの超音波に類似する時間構造を含む合成超音波を35パターン作出し、飛翔するアワノメイガのメス成虫に100 dBの音圧で提示した。どの合成超音波も逃避行動を誘起し、中でもパルス長5ms・反復率10パルス/秒の超音波による飛翔停止率が最大となった。このことは、アブラコウモリがエサを探す際に発する超音波がアワノメイガの防除に有望であることを示す。一方、上記の放飼試験では、アブラコウモリに追いつかれる間際にアワノメイガの顕著な逃避行動が観察された。そこで、5ms前後のパルスの中に、捕食寸前に発せられる持続時間の短いパルス(マイクロパルス)を包含する超音波を新たに合成し、アワノメイガが逃避を開始する音圧を精査した。その結果、マイクロパルス長が0.2ms前後となる超音波に対する逃避行動の閾値が有意に低いことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、研究実施計画に記載した通りに研究を進めることができた。アワノメイガの防除に有用と考えられたマイクロ超音波パルスの超音波発生装置への実装も済んでおり、スイートコーン圃場におけるアワノメイガの防除試験の準備も予定通りに終えている。

今後の研究の推進方策

2022年度に実施した、アワノメイガが忌避する超音波の時間構造の特定と同様の手順に沿って、2023年度はシロオビノメイガを対象に行動試験を行い、シロオビノメイガの防除に最適な超音波の時間構造を特定する計画である。また、スイートコーン圃場におけるアワノメイガの防除試験を研究分担者の所属機関で5月より開始する。2024年度は、シロオビノメイガに対して有用と考えられる超音波を用いてホウレンソウ圃場にて防除試験を計画している。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していた人件費を他の予算で賄うことができたため、次年度使用額が生じた。この使用額は、2023年度に計画していたコウモリの糞の次世代シーケンス解析のサンプル数を増やした際の外注費に利用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 超音波を介したアワノメイガの飛翔抑制と防除への応用2023

    • 著者名/発表者名
      中野亮 ・青木元彦 ・山岸希
    • 学会等名
      第67回 日本応用動物昆虫学会大会
  • [産業財産権] チョウ目昆虫の飛翔による行動をマイクロ超音波パルスで制御する方法2022

    • 発明者名
      中野亮
    • 権利者名
      中野亮
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2022-205205

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公開日: 2023-12-25  

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