地球環境の温暖化の影響は様々な極端現象が多発化することで顕在化している。生命の生存に不可欠な植物の生育状況や健康状態をモニタする技術は今後一層重要性を増すと考えられる。そのような背景を元に申請者らは、植物のストレス指標をフィールド内で多点同時的にその場観察するグリーンヘルスセンサネットワーク構築の着想を得た。初年度は、植物に直接取り付けられる測定システムの製作実施した。システムは小型・廉価・独立動作などの特徴を備え、非侵襲的に取り付けられるプロトタイプが完成した。2年目となる最終年度には、フレキシブルセンサの実装、センサシステムの改良、実証実験、さらに多機能化に向けたクロロフィル蛍光測定の検証に取り組んだ。 センサを植物の葉に取り付ける上で、センサは軽量でかつ柔軟性に富むことが望ましい。2022年度に開発したセンサは市販部品を組み合わせて構成されていたため、その大きさと重量が葉や枝にストレスを与えていた。そこで、センサヘッドとケーブルが一体化したフレキシブルセンサの開発を行った。完成したセンサヘッドの基板重量は1gに満たず、さらに柔軟性が高く葉に取り付けてもストレスを与えない。 改良した測定システムをフィールドにおいて複数回の動作検証を実施した。屋外の植物を長期連続測定するノウハウを構築し、バッテリ動作によって毎回1ヶ月以上駆動した。また、同一個体に複数のセンサを取り付けた測定により日照変化や紅葉による葉色変化をリアルタイムで取得することに成功した。解析によれば、測定データは特定波長で葉緑素量と相関するシグナル、強い日照に特徴的なスペクトル変化などを含む可能性が高い。 加えて、可視領域における葉の観察だけで無く、より生理学的な指標としてクロロフィル蛍光が検出できるかについて基礎的な検討を実施し、成果を学会発表した。また、現在投稿論文の査読中である。
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