研究課題/領域番号 |
22K19199
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 茂 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00224014)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | Botryococcus braunii / 炭化水素 / 緑藻 / 形質転換 / パーティクルガン |
研究実績の概要 |
微細緑藻Botryococcus brauniiは、乾燥重量の数十パーセントにも及ぶ大量の液状炭化水素を生産し、細胞外に分泌するため、バイオ燃料源として有望視されているが、現在のところ、外来遺伝子・タンパク質の導入技術が確立されていないため、本藻種自身における遺伝子機能の同定等ができない状況にある。そこで本研究では本藻種に対する信頼性の高い形質転換技術を確立し、炭化水素生産・分泌に関する基礎および応用研究を飛躍的に前進させることを目的とする。今年度は先ず、遺伝子導入への構造的障壁が少ない藻体を作出することに注力した。先行研究を基に、本藻種を1/4海水程度の塩分濃度で培養することで、炭化水素を容易に抽出できる状態にした。これにより群体の最外殻の多糖類の障壁が取り除かれたものと考えられる。また、本藻種の個々の細胞は、脂肪酸の炭素鎖伸長により生成する長鎖脂肪族アルデヒドが重合したバイオポリマーにより繋ぎ止められている。このバイオポリマーも外来遺伝子の導入を阻害している可能性があることから、脂肪酸生合成を抑制することで、群体構造が脆弱な藻体を作出することを試みた。脂肪酸合成酵素の阻害剤としてセルレニンとC75を用いたところ、両者とも脂肪酸合成をin vivoで阻害した。そこで藻体を殺すことなく、脂肪酸の生合成を抑制するのに適したセルレニンの濃度を求めた。また、形質転換体の選抜マーカーとして、過去の研究例ではzeocin耐性遺伝子およびGFP遺伝子が本藻種に対して試みられてきたが、本藻種は葉緑体が大きくクロロフィルの自家蛍光による影響が大きいことから、GFPとは異なる波長を示す蛍光タンパク質の導入の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形質転換実験用の藻体の培養に用いている培養庫の温度調節がうまくできなくなった時期があり、その修理期間も含めて藻体の培養の効率が悪い時期があったため。また、パーティクルガンによる外来遺伝子の導入の際に必要な高純度ヘリウムの確保が難しいことも、研究の進捗を遅らせる一因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作出した群体の表面構造が脆弱化した藻体を用いて、引き続き外来遺伝子の導入を試みる。特に形質転換体の選抜マーカーを多様化するために、様々なプラスミドを作製して検討を行う。導入用プラスミドは自身での作製に加え、外部委託することで加速化する予定である。また、高純度ヘリウムの確保が難しいパーティクルガンに加えてエレクトロポレーターを用いた遺伝子導入法も試す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は藻体の培養が進まなかった時期があったことから、外来遺伝子の導入試験を十分な回数行えなかったが、次年度は現在試せていない様々な選抜マーカーを含むプラスミドを使用する予定であるため、それらの合成委託費が大幅に増えることが見込まれる。また、遺伝子導入試験の頻度が上がることに伴い、消耗品費も多く必要となるため、翌年度分として請求する助成金と合わせて使用することになる。
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