研究課題/領域番号 |
22K19201
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 かがり 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (60526888)
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研究分担者 |
杉原 奈央子 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員 (00896243)
天野 雅男 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50270905)
礒川 悌次郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70336832)
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 生息履歴 / 同位体比分析 / マッコウクジラ / 鯨類 / 情報学 / バイオテレメトリー |
研究実績の概要 |
大型鯨類の生息履歴推定手法確立のため,マッコウクジラを対象に,1)安定同位体比分析,2)個体識別システムの構築,3)衛星発信機の装着を実施した. 1)安定同位体比分析:日本沿岸に,漂着・座礁したマッコウクジラの上顎歯を採集し(オス20-46歳, メス3-13歳),歯の断面を研磨,象牙質に形成される成長層を数え年齢を査定した.顕微鏡下で年齢毎に歯の成長層に沿って削り取り,得られた粉末の酸素及び炭素安定同位体比を安定同位体比質量分析装置で分析した.メス・オス共に,δ18Oは生活史を通じてほとんど変化が認められなかった.一方,δ13Cは個体間で異なる傾向がみられた.オス2 個体では,10代後半で急激に低下し,その後比較的一定の値を示す傾向がみられた.その他のオスでは,生涯を通した変化が小さく,緩やかに減少する傾向がみられた.オスは成長すると徐々に生息域を高緯度に移すと言われているが,オスの生涯を通した生息域や成長,栄養段階の変化は,一様ではないことが示唆された. 2)個体識別システムの構築:小笠原諸島周辺海域で撮影されたマッコウクジラの尾びれ画像を用いて,システムの構築を行った.畳み込みニューラルネットワークである deeplab-v3 と CascadePSPNet を用いて入力画像から尾鰭領域を取り出し,Adacos 損失を持つ距離学習により識別を行った. 既知の実画像を用いて,個体識別を行ったところ,特徴量が類似している上位5個体の正答率は90%以上と,既存のシステムに比べて非常に高い精度で個体識別を行えることが示された. 3)衛星発信機の装着:五島列島周辺海域においてマッコウクジラに衛星発信機を装着した.しかし,装着時に脱落するはずであった装着装置が脱落せず,衛星発信機に覆いかぶさるように個体に装着されてしまった.そのため,位置情報を得ることはできなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型鯨類の生息履歴推定手法確立のため,マッコウクジラを対象に,1)安定同位体比分析,2)個体識別システムの構築,3)衛星発信機の装着を実施した.上記三つの項目のうち,1)と2)に関して,順調に研究成果が得られつつある.3)に関しては,現状ではやや遅れており,装着システムの更なる改良が求められる.
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今後の研究の推進方策 |
安定同位体比分析に関して,引き続き日本沿岸に漂着した個体から試料を採取する.昨年度に収集した試料に関して,歯の年輪毎の炭素・窒素安定同位体比や,筋肉や脂肪,表皮の炭素・窒素安定同位体比の分析に取り組む. 個体識別システムに関して,より簡便に利用することのできるアプリケーションの作成を試みる. 衛星発信機の装着において,装着システムを更に改良し,五島列島沖合における衛星発信機の装着を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に炭素・窒素安定同位体比分析を実施する予定であったが,試料の前処理方法の検討に時間を要したため,分析することができなかった.今年度に実施予定である.
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