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2022 年度 実施状況報告書

分子機構から着想するバイオ炭のテーラーメイド生産

研究課題

研究課題/領域番号 22K19206
研究機関京都大学

研究代表者

河本 晴雄  京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (80224864)

研究分担者 南 英治  京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (00649204)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードバイオ炭 / 2050年カーボンニュートラル / 木質バイオマス / 熱分解分子機構 / 土壌機能
研究実績の概要

“バイオ炭”とは、炭素の貯留を目的に土壌に施用されるバイオマス由来の炭化物である。大気CO2の実に10%近くを森林が毎年固定していることから、廃棄される森林バイオマスの一部を安定なバイオ炭として土壌に隔離することが、大気中のCO2の削減技術として注目されている。本研究では、木材の熱分解分子機構の知見をベースに、植物の生育に必要な土壌機能を目的に応じて強化できる、テーラーメードなバイオ炭製造技術を創出する。本技術が創生されることで、植物の生育が促進され、大気からのさらなるCO2除去が期待される。
令和4年度の研究では、CCDカメラ付きの熱重量測定装置を用いて木材を薄くスライスした突板の炭化挙動を検討することで、木材炭化における重量減少と収縮挙動との関係を明らかにした。その結果、昇温過程において熱分解による重量減少がかなり進行した時点から収縮が開始し、重量減少がほぼ完了する時点で急激な収縮が起こることが判明した。また、バイオ炭の官能基(カルボキシ基、フェノール基)を定量評価する手法としてのBoehm法の検証を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、熱分解分子機構の知見から炭化を制御・改変することで、バイオ炭の性質(細孔分布、官能基など)をテーラーメードに制御できる新規な技術の提案を目指している。令和4年度には、バイオ炭の細孔に影響すると考えられる炭化過程における熱分解による重量減少と収縮との関係を明らかにした。また、保肥能力や植物の生育に有害な重金属の除去能力などの土壌機能に関連して、バイオ炭の官能基(カルボキシ基、フェノール基)の定量評価方法について検討した。このように本研究を遂行するための基盤情報および評価手法が整ってきていることから、“概ね順調に進展している”と自己評価した。

今後の研究の推進方策

バイオ炭の細孔に関する研究として、令和4年度の炭化時における収縮挙動の情報を基に、赤外線顕微鏡や電子顕微鏡観察などによる細胞および細胞壁レベルでの観察を進め、炭化における細胞壁中での細孔形成機構を解明する。また、テーラーメードに細孔を制御するための基盤技術の提案を目指す。一方、バイオ炭の官能基制御については、令和4年度に引き続いてその評価方法をまず確立するとともに、木材多糖(セルロースとヘミセルロース)とリグニンの炭化過程における官能基の生成機構と成分間での相互影響などを明らかにし、構成成分の熱分解分子機構の観点から考察することで制御手法について検討する。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度に次年度使用額として8万円が生じた理由は、研究の進展とともに令和5年度に研究経費がより必要な方向に研究計画が変更になったためである。この8万円については、令和5年度の薬品、実験器具などの消耗品経費として利用する計画である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)

  • [学会発表] リグニンの熱分解 -リグニンのマテリアル利用-2023

    • 著者名/発表者名
      河本 晴雄
    • 学会等名
      第2回リグニン学会特別セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] セルロースの熱分解におけるカルボキシ基の影響2023

    • 著者名/発表者名
      丸一 泰子、野村 高志、Resi Vita Loka Ginting、南 英治、河本 晴雄
    • 学会等名
      第73回日本木材学会大会
  • [学会発表] Thermal degradation behaviors of softwood and hardwood species2023

    • 著者名/発表者名
      Yu Wang、野村 高志、南 英治、河本 晴雄
    • 学会等名
      第73回日本木材学会大会
  • [学会発表] 熱分解反応性から見えてくる木材細胞壁ナノ集積構造2022

    • 著者名/発表者名
      河本 晴雄
    • 学会等名
      第14回木質科学シンポジウム「木材の超分子構造-化学構造から、ナノ、マクロ物性まで」
    • 招待講演
  • [学会発表] Pyrolysis-based biomass conversions towards 2050 carbon neutral goal2022

    • 著者名/発表者名
      Haruo Kawamoto
    • 学会等名
      8th International Conference on Sustainable Energy and Environment (SEE 2022)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Production of biofuels, biochemicals, and biochar from lignocellulosic biomass by pyrolysis2022

    • 著者名/発表者名
      Haruo Kawamoto
    • 学会等名
      岐阜ジョイント・ディグリーシンポジウム2022「共創の場としてのジョイント・ディグリー~教育研究の国際化と地方創生~」
    • 招待講演
  • [学会発表] Thermal degradation reactivity of hemicellulose and cellulose in softwood and hardwood pulps focusing on the metal cation composition(金属カチオン組成に着目した針葉樹および広葉樹パルプ中のヘミセルロース、セルロースの熱分解反応性)2022

    • 著者名/発表者名
      Resi Vita Loka Ginting、野村 高志、丸一 泰子、南 英治、河本 晴雄
    • 学会等名
      セルロース学会第29回年次大会
  • [学会発表] セルロースの熱分解開始機構-カルボキシル及び不飽和構造生成の速度論からの考察(Pyrolysis initiation mechanism of cellulose -consideration from kinetics of carboxyl and unsaturated structure formation)2022

    • 著者名/発表者名
      笛木 睦紘、南 英治、河本 晴雄
    • 学会等名
      第31回日本エネルギー学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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