研究課題
本研究は、赤模様をもつ紅白と黄色模様をもつ黄白という2つの品種に着目し、これらの品種の赤または黄色系の色素成分と、色素分子が代謝あるいは生成される過程を明らかにすることを目的とする。2023年度は紅白と黄白の皮膚、血漿、および消化管のカロテノイド成分、ならびに皮膚におけるプテリジン成分を液体クロマトグラフィー質量分析法によって調べた。また紅白と黄白におけるカロテノイド代謝遺伝子の転写産物を比較した。ゼアキサンチンを豊富に含む色上げ餌を与えた紅白と黄白の皮膚、血漿、消化管からはいずれもゼアキサンチンが検出された。一方、アスタキサンチンおよびそのエステル体は紅白の皮膚と血漿からは検出されたが、紅白の消化管と、黄白の各組織からは検出されなかった。以上の結果は、紅白において、消化管から吸収されたゼアキサンチンが体内を循環する過程もしくは皮膚においてアスタキサンチンに変換されるが、黄白の体内ではゼアキサンチンがアスタキサンチン変換されないことを示唆する。本研究ではまた、紅白と黄白の皮膚からプテリジンを検出し、おおよその構造を決定した。これにより、紅白と黄白におけるカロテノイドとプテリジンの定量分析が可能となった。紅白と黄白の皮膚において、カロテノイド代謝酵素遺伝子を調べた結果、紅白に比べて黄白において、マゴイに比べて多くの塩基置換されていること、ならびに一部の遺伝子は紅白の皮膚では発現するが黄白の皮膚では発現しないことが明らかとなった。以上の結果は、黄白において、カロテノイド代謝に必要な酵素遺伝子が、発現しないか、もしくは遺伝子の突然変異によって、ゼアキサンチンがアスタキサンチンに変換されなくなっていることを示唆する。しかし、この遺伝子がコードする酵素が紅白において機能的かどうかは不明であり、今後さらなる研究が必要である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
Zoological Science
巻: 41 ページ: 117-123
10.2108/zs230062
https://www.kitasato-u.ac.jp/mb/lab/bunshi/
https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20230125-03.html