研究課題/領域番号 |
22K19229
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
平栗 健史 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (90582817)
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研究分担者 |
清水 博幸 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (40337514)
高梨 琢磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60399376)
高木 浩一 岩手大学, 理工学部, 教授 (00216615)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | シイタケ / 雷撃音 / 周波数 / 加速度 / 子実体発生促進 |
研究実績の概要 |
先行研究において、シイタケ子実体発生促進の要因は、雷撃の電界による影響は低いことが推測された。そこで、雷撃の音が影響していると仮説を立てた。R5年度はR4年度の研究計画と同様に継続して、雷撃時に発生する音をスピーカで再現し、音圧レベルの異なる音を榾木へ印加して、子実体発生への影響を検証した。 この結果を元に、雷撃音を周波数ごとに区切った際の発生状況を確認した。音圧は、発生促進効果が最も得られる、115dBに設定した。周波数は、0.1-0.5kHz、0.5-1.0kHz、以降5.0kHz まで0.5kHzステップで変化させた周波数帯の音源を作成し、各周波数帯で印加を行った。収穫本数は、1.0~1.5kHzで最大の収穫量が得られ、それ以外の周波数帯では、最大収穫量の半数以下となった。これらの結果から、雷撃音に含まれる特定の周波数が発生促進の要因であることを推測でき、その再現性のデータも取得することができた。 研究業績として、これらをまとめた内容を日本きのこ学会でやその他多数の学会で発表し、日本きのこ学会年次大会では、その研究成果に対して表彰された。また、同じ内容で査読付き論文を投稿し、同学会で採録された。 原木以外にも菌床においても同様の実験を実施しており、音圧レベルは110dB前後が最適値であることを確認しており、最も多くの子実体発生の結果を得られている。菌床についてはまだ対外的な発表はしておらず、次年度の研究計画としたい。 関連した研究の派生では、培地に紙を用いる方法についても実験を進めており、材料としての菌糸の発生促進要因として検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実施計画では、昨年度までに得られた結果の音圧閾値に対して再現性を確認したが、概ね想定通りの結果が得られたことから、次年度の研究計画である音波に対する榾木の加速度の実験と、周波数に関する解析に取り掛かることができた。このことから、当初の計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画相当で進捗しているため、余裕をもって今後の実験を進めることができ、これにより正確なデータを蓄積することも期待できる。また、次年度以降は、雷音の振動による周波数特定と併せて顕微鏡にて子実体原基形成の観察を行う。その後、得られた結果から加速度値による振動周波数を特定し、振動発生システムの開発を行う。最終的には、この振動発生システムを用いて、栽培促進技術の確立を目指す。 実験環境としては、昨年度、大規模な恒温槽室の設備を所属大学で導入したため、気候などの変化で屋外の実験が難しい場合には、規模は縮小するがリファレンスととなる正確なデータを収集できる環境がある。このため、環境変化も含めて今後の研究推進に全く問題は無い。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額が予定よりも少なかった理由として、実験のための天候要因が挙げられる。昨年度は猛暑が続き、屋外でのシイタケ栽培に適さない気候であったため、実験回数が当初計画より減ってしまったため、予算支出も減少した。また、突風やゲリラ豪雨が頻繁に発生したため、機材の故障が多数生じてしまい、これにより実験実施開始までの遅延が生じ、実験が行えなかったことも原因の一つである。ただし、最低限の回数は執行できたため、取得データ量は解析ができるレベルであった。すなわち、研究成果自体には概ね影響は生じなかったと言える。昨年度、故障した実験機材は、今年度の実験などで改修するため、今後の支出に対しての研究計画には支障は無いと考える。
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