研究課題
牛伝染性リンパ腫は、近年全国的に激増し、令和5年の届出発生数は4,492頭で農林水産省が定める牛の監視伝染病疾患では最多(1998年発生頭数の45.4倍)である。牛伝染性リンパ腫の主な原因は、レトロウイルス科に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(Bovine leukemia virus: BLV)であるが、感染率(全国平均35%以上)が極めて高い現状を考えると、感染診断法の開発ではなく、的確な発症リスクに基づく早期摘発淘汰が極めて有効である。しかし、本病の発症機序は解明されておらず発症を予測可能な診断法は存在しない。そこで、レトロウイルスのプロウイルスの宿主ゲノム導入部位を検出することにより、クローナリティを評価するプロウイルス挿入部位の網羅的増幅法ライジング(RAISING: Rapid Amplification of the Integration Site without Interference by Genomic DNA Contaminationの略)を開発し、牛伝染性リンパ腫に応用した。その結果、BLVは地方病性牛伝染性リンパ腫(EBL)は発症時に細胞の均一性、すなわちクローナリティが高くなることが確認された。独自の解析ソフト(CLOVA)を用いてクローナリティ値(Cv)の程度を正確に数値化した結果、EBL発症牛は、未発症キャリアと比べてCvが有意に高く、CvはEBLの高精度な診断マーカーになることが確認された。今年度の研究により、クローナリティ解析はEBLの診断法並びに発症予測法として有用であると示された。今後は、大規模な野外調査により本技術の有用性を臨床現場で実証し、EBLによる畜産被害の軽減や生産性の向上に役立てていきたい。
<受賞>岡川朋弘. 日本農学進歩賞 2023年11月24日, Wisa Tiyamanee The 11th SaSSOH Best poster presentation award 2023年9月14日,
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