研究課題
本研究では日本に生息する様々な種のベクター蚊から、犬糸状虫を媒介しない蚊を遺伝学的に分離する。これらの蚊コロニー群を用いて「フィラリア非媒介蚊バ イオリソース」を構築し病原体を媒介しない蚊による犬糸状虫症の制御に向けた学術基盤を創出することを目指す。 全年度までに、フィールドから得られた蚊のうち、特にヒトスジシマカ2コロニーに着目して研究を進めた。ヒトスジシマカコロニーについてはイヌ糸状虫の感染表現型の解析を行った。また感染表現型を指標として兄妹交配・継代を行い、感染性の確認および感染表現型の遺伝学的固定がヒトスジシマカで可能なのか否かを検証した。その結果、今回得られら2コロニーについては感染感受性が低い個体が多いことが明らかとなった。フィラリア感染率は20%以下であった。感染表現型固定については、感染感受性型についてはそもそも感染型遺伝的バックグラウンドが小さかったことが推測され、また近交によるダメージが大きく、残念ながら感染型表現型の固定系統の樹立には現在のところ至っていない。しかしながら、感染低抗性表現型系統について感染性のバックグランドが正に作用したため、ヒトスジシマカーイヌ糸状虫非媒介性系統の樹立に成功した。今後この抵抗性系統のイヌ糸状虫抵抗性メカニズムを分子生物学的に解析する予定である。また、イヌ糸状虫陽性個体の周辺で蚊を採集することにより、自然界でイヌ糸状虫に対する感受性のナチュラルセレクションがなされた蚊を入手するためのフィールドワークを計画している。以上によりイヌ糸状虫に関する蚊のバイオリソースを増強していきたい。
3: やや遅れている
フィールド由来のサンプルからのネッタイイエカのコロニー化が近交係数の上昇により困難であったこと、またフィールド由来ヒトスジシマカの感染感受性が予想外に低かったため。しかしながら感染感受性が低い群の存在は今後の研究には極めて有意な発見であった。
特にヒトスジシマカに注力し、フィールド由来ヒトスジシマカについて高感受性系統の捕獲とコロニー化を目指す。またラボ系統のヒトスジシマカについても多系統を入手し感染感受性の比較解析と表現型固定毛系統を樹立する。
ヒトスジシマカ感染抵抗性系統の樹立には成功したものの、感受性系統の遺伝学的分離ができなかったためその比較ゲノム解析に関する費用等のため当該助成金が生じた。ゲノム解析、感受性系統分離フィールド調査等の用途で使用予定。
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