マウスX染色体上に存在するpiRNAである可能性があるsmall RNA codingクラスター領域の機能を解析するために、その領域にランダムな複数のindelまたは領域欠損変異を導入する研究を行った。 当該領域内には16のsmall RNA coding遺伝子が存在する。それらに全てに対するsgRNA発現ベクターを構築した。このベクターにはsgRNA発現を確認するためのEGFP蛍光レポーターカセットの一構成因子とネオマイシン耐性遺伝子発現カセットも搭載させた。これらのベクターをトランスポゾンシステムを用いて、マウスES細胞に導入し、ネオマイシンによるポジティブ選別を行うことで、sgRNAが導入されたES細胞ライブラリを構築した。ES細胞ライブラリ全体のゲノムDNAをバルク解析した結果、全てのsgRNA発現ベクターがES細胞ライブラリ中に確認された。これらの一部をシングルセルクローニングし、各クローンにおけるsgRNA発現ベクターの存在を確認したところ、最大で16全てのsgRNA発現カセットが導入されたクローンもあるが、多くは1から3種類のsgRNA発現カセットを有することが明らかになった。次にCas9発現ベクター一過的にこのES細胞ライブラリに導入し、標的ゲノム領域にランダムな変異を導入した。Cas9発現ベクターには薬剤依存的な自殺遺伝子も搭載し、このベクターがゲノムに取り込まれたES細胞をクローンを排除するシステムとした。このゲノム編集を生じさせた各ES細胞クローンにおいて標的染色体領域に生じた変異を確認した結果、indel変異や数十キロ塩基対におよぶ欠損変異が生じていることが明らかとなった。
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