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2022 年度 実施状況報告書

時空間制御CRISPR-Cas3の開発および生体内ゲノム改変への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K19238
研究機関東京大学

研究代表者

吉見 一人  東京大学, 医科学研究所, 講師 (50709813)

研究分担者 佐藤 守俊  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00323501)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワードCRISPR-Cas3 / 時空間制御システム
研究実績の概要

真核細胞における新規ゲノム編集ツールとして我々が開発したCRISPR-Cas3システムは、数百~数kbの広範な欠失変異を導入するというこれまでにない特徴を有しており、独自性、発展性に富んだ国産ゲノム編集技術として期待されている。しかし、精密にCRISPR-Cas3を制御するシステムがなく、生体内でのゲノム編集機能も未知である。そこで本研究では、低侵襲、高効率、高精度にCRISPR-Cas3を時空間的制御するシステム基盤および動物モデルの構築を目指した。
本年度は、時空間制御CRISPR-Cas3プラットフォームの構築研究を実施した。薬剤特異性にゲノム編集活性を制御するため、第三世代Tet-onシステムを用いて、薬剤誘導性CRISPR-Cas3システムを構築した。実際にヒト細胞に導入した結果、ゲノム編集活性のリークがみられない一方、ドキシサイクリン投与時に高効率でKOすることができる実験系の確立に成功した。また本システムを生体内で実施するため、本コンストラクトをRosa領域に導入したラットの作製に成功した。
更なる精密な時空間制御を行うため、分担者が開発してきた青色光照射によりタンパク質を結合できる光スイッチシステムと、分割化したCRISPR-Cas3を組み合わせたPA-Cas3システムの開発も目指している。本年度は、光依存的に活性を示す可能性のあるCRISPR-Cas3内でのスプリットポジションについて、結晶構造情報を用いたin silico解析により、約30か所同定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、低侵襲、高効率、高精度にCRISPR-Cas3を時空間的制御するシステム基盤および動物モデルの構築を目指している。薬剤制御性CRISPR-Cas3プラットフォームの構築については、細胞での評価および最適化が完了した。最適化された薬剤制御性CRISPR-Cas3は、セーフハーバー領域であるRosa26領域を対象に、申請者が開発した高効率ノックイン法Combi-CRISPR法を用いて導入を試みた結果、KIラットの作出に成功した。現在、系統化を進めている。
光依存的制御システムの構築については、青色光照射によりタンパク質を結合できる光スイッチシステムと、分割化したCRISPR-Cas3を組み合わせて、光依存的に活性を示す可能性のあるスプリット位置を約30か所同定し、すべてのポジションについてのCRISPR-Cas3コンストラクトを作成した。現在、ヒト細胞内で最も良いスプリット位置をスクリーニング中である。
以上から、本研究はおおむね計画通り進行している。

今後の研究の推進方策

次年度は、最適化された光および薬剤制御性CRISPR-Cas3について、セーフハーバー領域であるRosa26領域に導入し、生体内でのゲノム編集光および薬剤制御性法の開発を目指す。薬剤制御性CRISPR-Cas3システムについては、細胞で良い結果を示したTet-on CRISPR-Cas3コンストラクトをRosa領域に導入したKIラットを作出済みである。本個体はホモ系統を樹立後、ドキシサイクリン混合餌を給餌し、全身臓器におけるRNAおよびタンパク発現解析を行い、発現強度およびリークの有無の確認を実施する。その後、発現がみられる複数部位について、AAVまたはLNPを用いてgRNAを投与し、各部位におけるゲノム編集効率の評価およびオフターゲット解析を発現解析、NGS解析、組織化学的解析により行うことで、生体内での最適な活性化条件を決定する。
光制御性CRISPR-Cas3システムは、引き続きヒト細胞におけるスクリーニングを実施する。更なるin silico解析により新たな分割候補部位の同定も実施する。良い結果が得られたコンストラクトは、マウスまたはラットにCombi-CRISPR法を用いてRosa領域にKIし、系統化する。以上により、低侵襲、高効率、高精度にCRISPR-Cas3を時空間的制御するシステム基盤および動物モデルの構築を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度は光制御性CRISPR-Cas3の細胞でのスクリーニングに時間を要したため、動物実験に係る消耗品等の使用額が減少した。また、新型コロナウイルスの影響により学会等の多くがオンライン開催だったこともあり、出張費の支出がなかった。次年度は、計画通りに研究を実施し、目標を達成する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] ゲノム編集を用いた遺伝子改変マウス・ラットの作製2023

    • 著者名/発表者名
      吉見一人,真下知士
    • 雑誌名

      実験医学別冊 改訂 マウス・ラット実験ノート

      巻: - ページ: 160-170

  • [雑誌論文] 便利なデータベース紹介とその使用法2023

    • 著者名/発表者名
      吉見一人,真下知士
    • 雑誌名

      実験医学別冊 改訂 マウス・ラット実験ノート

      巻: - ページ: 171-179

  • [雑誌論文] 便利な受託機関紹介とその使用法2023

    • 著者名/発表者名
      吉見一人,真下知士
    • 雑誌名

      実験医学別冊 改訂 マウス・ラット実験ノート

      巻: - ページ: 180-187

  • [雑誌論文] 胚や精子の超低温保存法2023

    • 著者名/発表者名
      滝澤明子,小林俊寛,吉見一人
    • 雑誌名

      実験医学別冊 改訂 マウス・ラット実験ノート

      巻: - ページ: 59-67

  • [雑誌論文] 体外受精と胚移植2023

    • 著者名/発表者名
      小林俊寛,吉見一人
    • 雑誌名

      実験医学別冊 改訂 マウス・ラット実験ノート

      巻: - ページ: 68-73

  • [雑誌論文] CRISPR-Cas3システムによるゲノム編集-国産ゲノム編集技術の再生医療への挑戦2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺祥司、吉見一人、真下知士
    • 雑誌名

      実験医学 増刊 再生医療2023

      巻: 41 ページ: 193-199

  • [雑誌論文] Genome editing technology and applications with the type I CRISPR system,2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuto Yoshimi, Tomoji Mashimo
    • 雑誌名

      Gene and Genome Editing

      巻: 3-4 ページ: 100013

    • DOI

      10.1016/j.ggedit.2022.100013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A heterozygous LAMA5 variant may contribute to slowly progressive, vinculin-enhanced familial FSGS and pulmonary defects.2022

    • 著者名/発表者名
      Kaimori JY, Kikkawa Y, Motooka D, Namba-Hamano T, Takuwa A, Okazaki A, Kobayashi K, Tanigawa A, Kotani Y, Uno Y, Yoshimi K, Hattori K, Asahina Y, Kajimoto S, Doi Y, Oka T, Sakaguchi Y, Mashimo T, Sekiguchi K, Nakaya A, Nomizu M, Isaka Y.
    • 雑誌名

      JCI insight

      巻: 7 ページ: 522-524

    • DOI

      10.1172/jci.insight.158378

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Dynamic mechanisms of CRISPR interference by Escherichia coli CRISPR-Cas3.2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuto Yoshimi, Kohei Takeshita, Noriyuki Kodera, Satomi Shibumura, Yuko Yamauchi, Mine Omatsu, Kenichi Umeda, Yayoi Kunihiro, Masaki Yamamoto, Tomoji Mashimo,
    • 雑誌名

      Nature communications

      巻: 13 ページ: 4917

    • DOI

      10.1038/s41467-022-32618-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A high-quality severe combined immunodeficiency (SCID) rat bioresource.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshiki Miyasaka, Jinxi Wang, Kosuke Hattori, Yuko Yamauchi, Miho Hoshi, Kazuto Yoshimi, Saeko Ishida, Tomoji Mashimo,
    • 雑誌名

      PloS one

      巻: 17 ページ: e0272950

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0272950

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The role of cell-autonomous circadian oscillation of Cry transcription in circadian rhythm generation.2022

    • 著者名/発表者名
      Ritsuko Matsumura, Kazuto Yoshimi, Yuka Sawai, Nanami Yasumune, Kohhei Kajihara, Tatsuya Maejima, Tsuyoshi Koide, Koichi Node, Makoto Akashi,
    • 雑誌名

      Cell reports

      巻: 39 ページ: 110703

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2022.110703

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3:遺伝子治療、診断への応用2022

    • 著者名/発表者名
      吉見一人
    • 雑誌名

      再生医療

      巻: 21 ページ: 22-25

  • [学会発表] Mechanisms of CRISPR-Cas3 mediated DNA breaks and its application for genome editing in embryos2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshimi Kazuto, Takeshita Kohei, Noriyuki Kodera, Yamauchi Yuko, Hattori Kosuke, Yamamoto Masaki, Mashimo Tomoji
    • 学会等名
      the 36th IMGC 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] ゲノム編集による遺伝子改変ラットの作製2023

    • 著者名/発表者名
      吉見 一人
    • 学会等名
      第16回ラットリソースリサーチ研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome editing technology and applications with the type I-E CRISPR-Cas3 system2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuto Yoshimi
    • 学会等名
      熊本大学リエゾンラボ研究会/HIGOプログラム最先端研究セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3の開発と医療分野への応用2022

    • 著者名/発表者名
      吉見 一人
    • 学会等名
      東北大学 Neuropathy Management Web Seminar
    • 招待講演
  • [学会発表] タイプI-E CRISPR-Cas3による標的二本鎖DNA切断機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      吉見 一人, 竹下 浩平, 古寺 哲幸, 渋村 里美, 山内 祐子, 山本 雅貴, 真下知士
    • 学会等名
      日本ゲノム編集学会第7回大会

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公開日: 2023-12-25  

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