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2022 年度 実施状況報告書

二重蛍光スプライシングレポーターを用いた低酸素RNA発生生物学分野の確立

研究課題

研究課題/領域番号 22K19239
研究機関東京大学

研究代表者

片岡 直行  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60346062)

研究分担者 田中 智  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90242164)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード低酸素応答 / 転写後調節 / RNAスプライシング / レポーター / 細胞分化 / Rbbp6 / TS細胞
研究実績の概要

低酸素応答は外界からのストレスへの応答機構の一つで、細胞が低酸素条件下に曝されると細胞の代謝・呼吸を調節して、恒常性の維持に働く。また発生段階のシグナルとしても重要であり、ヒトやマウスの初期の胎盤形成は、子宮内の低酸素環境下で進行する。低酸素応答では、様々な転写因子による転写調節がよく知られている一方、転写後調節過程である選択的スプライシングにどのような影響を与えるかについては、ほとんどわかっていなかった。そこで、マウスN2A細胞を用いて、低酸素条件下で選択的スプライシングが変化する遺伝子を網羅的に解析した。そして、最も大きな変化を示す遺伝子として、Retinoblastoma binding protein 6 (Rbbp6)を同定した。常酸素下では、すべてのエクソンを含んだiso1が優位に発現するが、低酸素下ではエクソン3下流のイントロン内でpoly(A)鎖付加が起きた短いiso3の産生が増える。そこで神経細胞やがん、および胎盤細胞など様々な細胞や組織でバイオマーカーとして使用できると考え、低酸素応答を示す転写後調節モニターレポーターの構築を試みた。まず、Rbbp6の選択的スプライシングを受けるエクソン2からエクソン4までのゲノム領域をクローニングし、このレポーターをマウスNeuro2A細胞、NIH3T3細胞、TS細胞に導入し、iso1型とiso3型の両方が産生されることを確認した。iso3の発現には、イントロン内でpoly(A)鎖が付加される必要があるが、そのために必要な配列はまだ同定されていない。そこで、iso1, 3の発現に必要なイントロン内配列を探索する目的で、上記のレポーターに様々な欠失を導入したものを準備した。また、Rbbp6 iso1, iso3の細胞内局在や機能を調べる目的で、それぞれのcDNAを用いて発現ベクターを構築し、培養細胞での発現を確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低酸素応答をモニターできるスプライシングレポーター構築のためのゲノム領域や、Rbbp6 iso1, 3のcDNAのクローニングおよび細胞での発現ベクターへの導入を行い、そのスプライシングパターンや発言の確認を行うことができた。また、最終的なレポーター作製のためのiso1, 3産生に必要な領域同定のための一連の欠失レポーターも作製を完了しており、今後培養細胞に導入して解析を進めることが可能である。これらの予定していた工程を行うことができたため、おおむね順調であると判断する。

今後の研究の推進方策

iso1, 3に必要な領域を避けて、エクソン3の下流のイントロン3内に、RFPのcDNAを挿入する。また、エクソン4の下流にGFPを連結する。このレポーターでは、イントロン3がスプライシングによって除去されれば、エクソン2,3,4が繋がり(iso1型)、下流のGFPが融合したタンパク質が発現する。一方、イントロン3内でpoly(A)鎖付加が起きる場合、その下流側の領域は切断されてしまうため、エクソン2,3のみが繋がり、RFP融合タンパク質が発現する(図3A)。常酸素状態ではGFPが、低酸素状態ではRFPが主に発現するため、顕微鏡下の観察のみで低酸素応答をしている細胞を識別することができる。このようなレポーターを作製し、マウスNeuro2A細胞、NIH3T3細胞、TS細胞に導入後、安定に発現する細胞株を樹立する。TS細胞については、その後常酸素下、低酸素下で分化誘導し、分化マーカーを指標として分化状態を比較する。

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公開日: 2023-12-25  

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