研究課題
アミロイドβ(Aβ)とは、アルツハイマー病患者の脳に蓄積する異常型のタンパク質である。当研究では独自に開発したハイパースペクトル蛍光顕微鏡を用いてリスザルの脳のAβ病変を解析し、リスザルのAβが紫外励起下で特徴的な二峰性ピークを有する蛍光スペクトルを有することを明らかにした。このスペクトルデータに主成分分析に基づき、Aβを特異的かつ機械的に検出することに成功した。このことは、病理診断技術の素養がなくても、Aβ病変を機械的かつ非標識で検出出来ることを示している。本研究ではさらに、同様の解析をチンパンジー、アカゲザル、フサオマキザル、フラミンゴのAβ病変で実施した。興味深いことに、チンパンジーのAβ病変の蛍光スペクトルはリスザルと同様だった一方で、他の動物種の蛍光スペクトルは大きく異なっていた。リスザルとアカゲザルの脳組織を用いたラマン分光解析に基づき、何らかの化学的修飾が蛍光スペクトルの差異に寄与していることが示唆されたが、その同定には至らなかった。
3: やや遅れている
Aβ病変の自家蛍光について、新たな知見を得ることに成功した。同じAβであっても動物種毎に蛍光スペクトルが異なることは、アミロイドの蛍光特性に構造依存的な差異が生じる可能性を示唆しており、蛍光スペクトル情報を用いた病型識別の可能性が期待される。一方で、当初予定していた異なるアミロイド間のスペクトルの差異については十分なデータが得られていないため、進捗状況区分は「やや遅れている」とした。
Aβ以外のアミロイドの解析を進めていく。蛍光分光顕微鏡を用いて、複数病型のアミロイドーシス症例(Aβ, AA, AL, AIAPP, AApoCIII)の非染色および染色組織切片から蛍光分光画像を取得する。それぞれのアミロイド病変から得られたスペクトルデータを用いて多変量解析を行い、病型識別モデルを開発する。また、動物種毎のAβ病変の蛍光スペクトルの差異の要因については、質量分析を用いて解析を進めていく。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Veterinary Pathology
巻: 60 ページ: 203~213
10.1177/03009858221148511
Amyloid
巻: - ページ: 1~3
10.1080/13506129.2023.2169603
Veterinary Sciences
巻: 10 ページ: 166~166
10.3390/vetsci10020166
巻: 60 ページ: 60~68
10.1177/03009858221128924
Experimental Animals
巻: - ページ: -
10.1538/expanim.22-0125
光学
巻: 51 ページ: 528-532
http://www.tuat.ac.jp/~tatlvt/