メチオニン代謝は食事や栄養条件の影響を受けやすく、メチオニン摂取量を制限することで、寿命の延長やがん治療の効果が高まることなどが報告されており、生理的・病態生理的に極めて重要な代謝経路である。メチオニンはS-アデノシルメチオニン(SAM)に代謝されることで、DNAやヒストンのメチル化を引き起こす。DNAやヒストンのメチル化は、エピジェネティックな制御機構において中心的な役割を果たすことから盛んに研究が行われてきた。一方で、メチル化を受けるタンパク質はヒストンだけではないにも関わらず、その他のタンパク質メチル化に関する情報は極めて少ない。タンパク質脱リン酸化酵素PP2Aは細胞内の主要なセリン・スレオニン脱リン酸化酵素であり、我々は以前、PP2Aがメチル化を受けることで複合体の構成が変化することを報告している。 マウスでは、メチオニン減量・コリン欠乏・高脂肪餌で食餌的に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルを誘導できる。そこで本研究では、PP2Aのメチル化が食餌誘導性のNASHモデルの病態に与える影響を解析した。 PP2Aメチル化酵素Lcmt1を全身性にKOしてNASHを誘導すると、生化学的および組織学的に病態の顕著な悪化が観察された。そこで本年度は、PP2A脱メチル化酵素Ppme1のfloxedマウスを作製するとともに、肝実質細胞特異的および肝星細胞特異的にCreを発現するマウスを導入した。現在、これらのマウスを交配することで、肝実質細胞特異的および肝星細胞特異的なLcmt1およびPpme1 KOマウスの作製を行っている。
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