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2022 年度 実施状況報告書

鉄依存的な脱メチル化によるライディッヒ細胞の成熟化が誘導する精子形成の解明と応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K19254
研究機関県立広島大学

研究代表者

山下 泰尚  県立広島大学, 生物資源科学部, 准教授 (50452545)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード精子形成 / ライディッヒ細胞 / 鉄 / 雄性不妊
研究実績の概要

哺乳動物において,鉄不足は生殖機能を低下させるが,その詳細は不明である。食事により取り込まれた鉄は肝臓に貯蔵され,トランスフェリン(TF)に結合して末梢組織のTF受容体(TFR1)を介して取り込まれる。特に精巣にはライディッヒ細胞(LC)にTFR1が局在することから,当研究室では,ライディッヒ細胞特異的TFR1KOマウス(Tfr1cKO)を作成した。その結果,テストステロンが低下し,精子形成不全を呈する結果を得た。
哺乳動物では,精子形成が開始されるためには,性成熟期以降の精巣でテストステロンが合成される必要がある。近年,幼若期のLCにはLH受容体(Lhcgr)発現が低く,このためテストステロン合成遺伝子(Cyp17a1)の発現が低い幼若ライディッヒ細胞(FLC)が存在し,成熟期にはLhcgrとCyp17a1が高発現し,テストステロンが合成可能な成獣ライディッヒ細胞(ALC)が存在することが示された。しかし,そのALCの出現メカニズムは不明である。本研究では,鉄依存的な脱メチル化酵素のTET2に着目し,ALCの出現にはTET2によりFLCが脱メチルされることが重要と仮説した。FLCマーカー(HSD11B), ALCマーカー(CYP17A1)を用いてControlとTfr1cKOの精巣間質を調べた結果,Tfr1cKOでは,FLCが多く,ALCが著しく低下し,同時に脱メチル化酵素(TET2)の発現が低下した。さらに,次世代シークエンスによるControlとTfr1cKOのLCを用いたメチル化シークエンスを行った結果,Tfr1cKOではLhcgr,Cyp17a1などのALC化への必須遺伝子の脱メチル化の割合が低下した。さらにin vitroアッセイ系により鉄を添加してFLCを培養するとLhcgrおよびCyp17a1の発現が上昇し,ALC様細胞へと分化することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2022年度の研究計画では,ControlとTfr1cKOのLCをサンプリングし,これらを用いて次世代シークエンスにより全ゲノムをターゲットにした鉄依存的に脱メチル化される遺伝子の探索を行い,Tfr1cKOマウスではLhcgrやCyp17a1などのALC誘導に必須の因子の遺伝子のメチル化が低下していることを見出した。さらにin vitroアッセイ系を新たに立ち上げ,TF-Fe3+添加依存的にFLCにおいてLhcgrおよびCyp17a1の発現が増加し,ALCに必要な遺伝子セットの発現が増加すること,この結果FLCがALC様細胞へと変化することを明らかにした。しかし,新型コロナウイルスによる研究の制約に加え,in vitroアッセイ系の安定化に時間を要したため,in vitroアッセイ系でTet2 siRNAあるいは阻害剤によりTET2の機能を阻害することによりLhcgrやCyp17a1などの遺伝子の脱メチル化が低下し,FLCのままで存在するところまで研究を進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

今後は,in vitroアッセイ系によりTF-Fe3+添加依存的に発現増加するLhcgrおよびCyp17a1がTET2の脱メチル化によるものかをより詳細に検討し,ALC出現のためにFLCの脱メチル化が重要であることを明確にする。具体的には,in vitroアッセイ系でTF-Fe3+を添加してFLCを培養する際に,Tet2 siRNAあるいは阻害剤によりTET2の機能を阻害することによりLhcgrやCyp17a1などの遺伝子の脱メチル化が低下し,FLCのままで存在することを証明する。加えて,上記の基礎研究の知見を,ウシにおいて応用する。現在,精液性状が低下した個体の精巣および精巣上体を得ていることから,Tfr1遺伝子の発現低下やTET2の発現および活性低下の個体がどの程度存在するのかについても検討し,鉄不足に起因した牛の繁殖障害が存在することを明らかにする予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスによる研究の制約に加え,in vitroアッセイ系の安定化に時間を要したため,in vitroアッセイ系でTet2 siRNAあるいは阻害剤によりTET2の機能を阻害することによりLhcgrやCyp17a1などの遺伝子の脱メチル化が低下し,FLCのままで存在するところまで研究を進めることができなかったため,2023年度はこれらの研究,特にsiRNAとLhcgrおよびCyp17a1のメチル化シークエンスを行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Lipopolysaccharide (LPS) suppresses follicle development marker expression and enhances cytokine expressions, which results in fail to granulosa cell proliferation in developing follicle in cows2023

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Naoki、Takeuchi Himeno、Yamaoka Manami、Nakanishi Tomoya、Tonai Shingo、Nishimura Ryo、Morita Takehito、Nagano Masashi、Kameda Shingo、Genda Kaori、Kawase Jun、Yamashita Yasuhisa
    • 雑誌名

      Reproductive Biology

      巻: 23 ページ: 100710~100710

    • DOI

      10.1016/j.repbio.2022.100710

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ブタ卵胞液中のTF濃度を基盤とした2ステップ培養(preIVM-IVM)による新規IVM法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      藤内慎梧,河端茜,山岡愛実,中西寛弥,島田昌之,山下泰尚
    • 学会等名
      日本畜産学会第130回大会
  • [学会発表] 排卵期の卵巣における脂質転写因子SREBPの活性化亢進によるプロゲステロン産生とその破綻による排卵障害2022

    • 著者名/発表者名
      山下泰尚
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会 生理学・生化学分科会/繁殖分科会合同シンポジウム
    • 招待講演
  • [図書] 新 家畜生産学入門2022

    • 著者名/発表者名
      平山 琢二、須田 義人
    • 総ページ数
      100
    • 出版者
      サンライズ出版
    • ISBN
      9784883257492

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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