研究課題/領域番号 |
22K19256
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
筏井 宏実 北里大学, 獣医学部, 准教授 (80327460)
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研究分担者 |
岩月 正人 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (70353464)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ハマダラカ / 卵形成 / マラリア / ベクターコントロール / 環境負荷低減 |
研究実績の概要 |
マラリアは、ハマダラカ類の蚊によって媒介される世界で深刻な昆虫媒介性感染症である。マラリアの患者や死者の多くがアフリカの貧困な農村地帯に生活している状況から、容易かつ低予算でハマダラカの発生をコントロールできる方法が求められている。本研究は、環境への影響に考慮した、容易かつ低予算でハマダラカの発生をコントロールできる方法を編み出すことを最終目的として実施されている。 これまでの研究結果より、ある特定の腸内細菌はMethylobacterium sp.であった。さらに、ハマダラカの卵形成を抑制させる物質は、Methylobacterium sp.が放出する熱耐性化合物で、その化合物は蚊の卵黄タンパク質前駆体ビテロジェニン(Vg)発現に影響を与えていることが考えられた。 本年度は、分離されたMethylobacterium sp.の全長16S rDNAを解析した。その結果、M. fujisawaense(AB698695)と99.9%一致した。次に、Methylobacterium sp.による卵成熟抑制の機序の検討を行った。血液消化への影響は、菌懸濁液を摂取させた蚊(菌摂取蚊)と無処置蚊における吸血後の中腸内タンパク質をBradford 法により定量した。その結果、両群間で差はなかった。ホルモン分泌への影響は、インスリン様ペプチド(ILP)とVgのmRNA発現量をリアルタイムPCRにより定量した。その結果、ILP mRNA発現量は無処置蚊と菌摂取蚊の間で差はなかった。Vg mRNA発現量は無処置蚊と比較して菌摂取蚊において増加傾向にあった。なお、菌摂取蚊のVg mRNA発現量と体内のMethylobacterium sp.量には弱い相関があった。以上のことからMethylobacterium sp.はVg mRNA発現に影響を与えると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、菌種の特定および卵形成抑制に関与するホルモンを絞り込めたので、研究はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果より、Vg mRNA発現量増加現象と卵形成を抑制の関係を明らかにする必要が出てきた。卵巣へのVg取り込みおよび卵内の卵黄タンパク質・ビテリン(Vn)蓄積に与える影響を検討することにより、Vg mRNA発現量増加に伴う卵形成を抑制機序の解明を行う。 順次、ハマダラカを用いた化合物のスクリーニングを実施し、卵形成抑制熱耐性化合物の分離同定を試みるとともに、Methylobacterium sp.のハマダラカへの菌摂取法の検討および環境への影響に着目した応用利用に向けた検討も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品に若干の誤差で2958円の残が出た。 次年度の消耗品費として使用する予定である。
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