研究課題/領域番号 |
22K19257
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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研究分担者 |
齊木 選射 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70738971)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 冬眠 / マラリア原虫 / ハムスター / 低温 / 代謝 |
研究実績の概要 |
非冬眠動物であるマウスは、環境温度が摂氏4度まで低下した際、一時的な体温低下後に一定レベルまで複温するという特徴を有する。そこで我々は、擬似的な低体温療法の前臨床研究として、低温環境に暴露した感染個体におけるマラリア原虫の挙動を検証した。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum 3D7株)を摂氏4度で培養したところ、原虫感染赤血球率の増加が抑制された。次いで、齧歯類特異的マラリア原虫(P. berghei ANKA株)をBALB/cに感染させ、摂氏4度前後の室温となる動物の飼育室(低温飼育室)にて原虫の挙動を解析した。その結果、低体温宿主において感染赤血球率の増加が減少に転じた。BALB/cとはマラリア感染時の免疫反応が異なり、脳性マラリアの実験的モデルとしても使用されるC57BL/6Jにおいて同様の解析をした結果、原虫の増殖が同様に抑制された。これらの結果は、低温医学的見地に基づく新規のマラリア治療法として、低体温療法の有効性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マラリア原虫をモデルとして、低温状態におかれた宿主(マウス)における寄生性原虫の挙動を組織・分子レベルで解析することにより、宿主-病原体相互作用における新規の科学的知見を得ることを試みた。当該年度の研究により、ヒトおよびげっ歯類マラリア原虫が細胞自律的に低温感受性を有する可能性を見出した。マラリア感染患者に対する低体温療法の有効性を示唆する結果も得ており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
非冬眠動物とは顕著に異なる代謝動態を示す冬眠ハムスターにおいて、宿主の栄養代謝動態と密接な関係を有するマラリア原虫の挙動を解析することにより、新規の宿主-病原体相互作用の解明を目指す。冬眠動物におけるマラリア原虫の局在解析、マラリア原虫の酸化ストレス代謝についての解析、マラリア原虫の冬眠耐性遺伝子の探索の解析の各々について、研究計画通りに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)ヒトマラリア原虫を用いた培養系の研究計画等が予想以上に進展し、それを主に据える研究計画細目を重点的に実施した。その結果、研究計画の実施順序を一部変更し、物品費(消耗品)および人件費の大部分を使用する他の研究計画細目を次年度以降に実施することにしたため。 (使用計画)物品費(消耗品)および人件費を活用し、研究計画のうち特にマラリア原虫の冬眠耐性遺伝子の機能解析を集中的に実施する。
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