低体温療法とは、患者の体温を人為的に低く保つことで脳の保護や脳障害の進行を抑制する治療法である。マラリアに対する低体温療法の前臨床研究として、低温環境に暴露した感染個体におけるマラリア原虫の挙動を検証した。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum 3D7株)を4度Cおよび33度Cで培養したところ、37度Cに比べて原虫感染赤血球率の増加が抑制されること、この現象は温度依存性であることが明らかになった。33度Cの低温培養系において、低用量の抗マラリア薬を添加すると、殺マラリア原虫効果が促進された。マラリア原虫の増殖限界温度を検討したところ、それは27度C付近であることが明らかになった。加えて、マラリア原虫の特定のステージが低温条件に対し高い感受性を持つ可能性が示唆された。これらの結果は、新規のマラリア治療法として、低体温療法の有効性を示唆するものである。
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