研究実績の概要 |
バイオ医薬品など組換えタンパク質の需要は拡大しているが、現在の培養細胞を用いた高コストの製造技術は改善する必要がある。我々は遺伝子組換えニワトリの卵白に様々な組換えタンパク質を低コストで生産する技術を開発したが、医薬品製造などへの応用を考えたときにN-結合型糖鎖修飾がヒト型と比較して不完全であること(具体的には末端のガラクトースならびにシアル酸が欠けていること)が解決すべき課題であった。この糖鎖修飾の違いは、ニワトリ卵管細胞に発現する糖転移酵素の特性により決定されているため、適切な糖転移酵素を卵管細胞に発現させることで、卵管細胞により生産された卵白中の組換えタンパク質に、ヒト型のN-結合型糖鎖修飾が実現することが期待される。 昨年度樹立した卵管組織でβ-1,4-galactosyltransferase 1 (ガラクトース転移酵素)とβ-galactoside α-2,6-sialyltransferase 1 (シアル酸転移酵素)を発現するノックインニワトリと過去樹立したヒトインターフェロンβを卵管組織で発現するニワトリを交配し、ダブルノックインニワトリを作出した。このニワトリを性成熟させ、採卵し卵白におけるインターフェロンβの糖鎖について解析を行った。外来蛋白質であるインターフェロンβは糖転移酵素の存在下で電気泳動の移動度が変化し、糖鎖の変化が予測された。実際、レクチンブロッティングにより、インターフェロンβにおいて、従来認められなかったガラクトース並びにシアル酸の付加が顕著に亢進しており、ヒト型に近いN-結合型糖鎖修飾になっているものと考えられる。
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