研究課題/領域番号 |
22K19266
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40508595)
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研究分担者 |
梶谷 孝 東京工業大学, オープンファシリティセンター, 特任専門員 (20469927)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質結晶 / 構造解析 / 小角散乱 / 結晶化メカニズム |
研究実績の概要 |
近年、細胞内でタンパク質が自発的に結晶化し、免疫活性化や毒素、ウイルスの保存、固体触媒など、様々な機能を発現することが明らかとなってきた。しかし、多様な機能の要となる結晶化過程は依然として不明であり、細胞内タンパク質結晶の全容を理解する上で長年の課題となっている。そこで、本研究では、結晶化初期過程のオリゴマー形成からサブマイクロ結晶に至るまで、無秩序な集合体から秩序構造への動的な変化を微結晶X線構造解析とX線小角散乱法(SAXS)によって直接追跡し、細胞内結晶化の全容を解明する。 本年度は、細胞内タンパク質結晶として、昆虫細胞内結晶であり、ウイルス内包・保存の機能を有する「多角体」と昆虫病原性細菌内結晶であり、共生する線虫の成長や病因に関与していると推定されている「CipA」を用いてこれらの大腸菌内での結晶化とその構造解析を行った。多角体を大腸菌内でIPTG誘導により合成すると1時間後には、300nmほどの結晶が合成することを確認した、16時間まで培養すると600nmまで結晶が成長する。X線構造解析では、2時間の培養でindexされた結晶が得られ、4時間以上の培養により、解析可能なデータ収集を行うことができた。つまり、1-2時間の間で結晶が形成されたことを示している。また、CipAの構造解析も進めており、大腸菌内で構造解析が可能なことを明らかにした。さらに、多角体とCipAとも大腸菌で合成した結晶のSAXS測定では、結晶性を示すBraggピークを観察することができ、X線結晶構造解析と同じ空間群、セルパラメーターであることを確認した。今後は、SAXS測定の時間追跡によりアモルファスの凝集体から結晶性へと変化する過程を追跡する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、X線小角散乱やX線結晶構造による結晶化過程の追跡を行うために、基礎データの収集をおこなった。X線結晶構造解析では、培養時間により結晶性の確認を行うことができ、SAXS測定でも結晶性を確認する測定条件の洗い出しを終えているため、最終年度にSAXSの時間追跡測定を行う準備は整っている。従って、おおむね、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、SAXSの時間追跡測定を進める予定である。多角体結晶、CipA結晶ともSAXSでBraggピークの条件出しは終えており、準備は整っている。さらに、結晶化や結晶形成に重要だと思われるアミノ酸を置換した変異体合成を進めており、これらの解析を進めることで、結晶化メカニズムの解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、大腸菌によるタンパク質結晶合成のため、少量での結晶合成が多く、消耗品にかかる費用が少なかった。最終年度は、より消耗品が必要になるため、次年度に回すことになった。また、結晶構造解析に必要となったワークステーションの購入とオートクレーブの購入を進める。新たに参加が決まった学会への旅費にあてたい。
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