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2023 年度 実施状況報告書

in situ cDNA増幅による超高感度 RNA-蛋白 相互作用 解析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K19269
研究機関名古屋大学

研究代表者

増田 章男  名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードRNA-タンパク相互作用 / CLIP / tRIP / RNA結合タンパク / クロマチン分画
研究実績の概要

研究代表者が開発した効率的RNA-タンパク相互作用検出法 (tRIP法) の、さらなる効率化を進めるため、細胞から効率的にクロマチン分画を回収する方法の開発と検証を行った。
ゲノムDNAを読み取ってRNAを合成する転写の場であるクロマチン分画は、高密度にDNAや核内タンパクが集積しているため、そこから効率的に目的タンパクを回収することは、困難である。様々な方法が開発されてきたものの、いずれも効率と難易度に課題を抱えている。本研究で、我々は、細胞抽出液の塩濃度を急激に変化させることで、DNA-RNA-蛋白が一体となった状態でクロマチン分画を析出させ、沈殿した複合体から効率的にRNAを回収する、簡便かつ確実な新規クロマチン分画回収法を構築した。
この方法の実効性を確認するため、培養細胞からクロマチンRNAを回収し、Nanopore PromethION による long read direct RNA-seq を行った。核可溶性分画とクロマチン分画の比較では、イントロン領域を含んだリードがクロマチン分画で著明に増加しており、期待通りクロマチン分画RNAが回収されていることが確認された。さらに、スプライシング促進因子SRSF3のノックダウン細胞とコントロール細胞の比較を行ったところ、SRSF3ノックダウンで複数のエクソンにまたがるイントロン領域のリテンションが生じ、核可溶性分画で、このリテンション領域がスプライシングされると同時に、領域内エクソンのスキッピングが生じていることが判明した。リテンション領域は、我々のtRIP解析でSRSF3が顕著に結合している領域であることが明らかであった。今回の研究で、SRSF3がスプライシングを促進させるために、イントロンリテンションの制御が重要な役割を果たす、という新たな知見を発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

クロマチン分画回収法の開発に成功し、RNA-seq解析を行ったところ、SRSF3によるスプライシング促進機構にイントロンリテンション制御が関わる、という新たな知見を得た。tRIP法の効率化検証のためにも、当初予定に無かった、このSRSF3機構のさらなる解析が必要となった。エクソンに比べイントロン領域は極めて長いため、通常のshort read RNA-seqに加え、long read RNA-seq の実験系を新規に立ち上げることとなった。このため、研究計画全体の進捗に遅れが生じた。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で開発した新規クロマチン分画回収法をもとに、時間や温度、バッファー条件など、様々な使用条件の検討を行うことでRNA-タンパク解析法の高感度化を進めていく。
また、RNA-seqとtRIP-seq進捗の統合解析を進め、SRSF3を含んだ複数種RNA結合タンパクの機能解析を進める。
得られた結果をまとめ、適宜、成果の論文発表を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

今年度研究により、クロマチン分画回収法の開発に成功し、RNA-seq解析を行ったところ、SRSF3によるスプライシング促進機構にイントロンリテンション制御が関わる、という新規知見を得た。tRIP法の効率化検証のためにも、当初予定に無かった、このSRSF3機構のさらなる解析が必要となり、long read RNA-seq の実験系を新規に立ち上げることとなった。このため、研究計画全体の進捗に遅れが生じ、予定より大規模シークエンス解析の利用が減ることとなり、次年度使用額が生じた。
未使用額は、実験進捗の加速のための研究補助員雇用費、細胞生化学実験および大規模シークエンス解析に使用予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] FexSplice: A LightGBM-Based Model for Predicting the Splicing Effect of a Single Nucleotide Variant Affecting the First Nucleotide G of an Exon2023

    • 著者名/発表者名
      Joudaki Atefeh、Takeda Jun-ichi、Masuda Akio、Ode Rikumo、Fujiwara Koichi、Ohno Kinji
    • 雑誌名

      Genes

      巻: 14 ページ: 1765~1765

    • DOI

      10.3390/genes14091765

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Splicing regulation of GFPT1 muscle-specific isoform and its roles in glucose metabolisms and neuromuscular junction2023

    • 著者名/発表者名
      Farshadyeganeh Paniz、Nazim Mohammad、Zhang Ruchen、Ohkawara Bisei、Nakajima Kazuki、Rahman Mohammad Alinoor、Nasrin Farhana、Ito Mikako、Takeda Jun-ichi、Ohe Kenji、Miyasaka Yuki、Ohno Tamio、Masuda Akio、Ohno Kinji
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 26 ページ: 107746~107746

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.107746

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Neural Isoforms of Agrin Are Generated by Reduced PTBP1-RNA Interaction Network Spanning the Neuron-Specific Splicing Regions in AGRN2023

    • 著者名/発表者名
      Bushra Samira、Lin Ying-Ni、Joudaki Atefeh、Ito Mikako、Ohkawara Bisei、Ohno Kinji、Masuda Akio
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 7420~7420

    • DOI

      10.3390/ijms24087420

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Spatial organization of RNA-binding protein networks to regulate splicing2023

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Okamoto and Akio Masuda
    • 学会等名
      24th Annual Meeting of the RNA society of Japan
  • [学会発表] RNA-binding proteins form meshworks in nuclei to regulate splicing2023

    • 著者名/発表者名
      Akio Masuda and Takaaki Okamoto
    • 学会等名
      2023 日本生化学学会
  • [学会発表] 液―液相分離が規定するRNA代謝2023

    • 著者名/発表者名
      増田章男
    • 学会等名
      2023 富山大学大学院生命融合科学教育部セミナー/富山RNA倶楽部
    • 招待講演
  • [備考] 名古屋大学大学院医学系研究科神経遺伝情報学ホームページ

    • URL

      https://www.med.nagoya-u.ac.jp/neurogenetics/

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公開日: 2024-12-25  

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