シアノバクテリアの概日時計を改変して月面環境サイクル耐性を付与するために、我々が保有する周期変異体ライブラリからKaiCの長周期変異をリストアップし、それらを複数導入したKaiC多重変異体の候補を設計した。また、別の視点からも長周期変異の候補を検証した。他種シアノバクテリア由来のKaiCのアミノ酸配列、機能、活性を参照しつつ、本課題の目的に沿ったアミノ酸変異の候補を調べた。著しい長周期化をもたらす変異は確認されなかったが、長周期化傾向を示す変異群が一部見られたため、それらについては加算的に導入することで一定の効果が期待できる。既知のX線結晶構造をもとに、候補となる多重変異が著しい構造不安定化や機能失活をもたらす可能性がないか、これまでの経験等を踏まえつつ検証した。 一方、長時間にわたる機能評価・スクリーニングをより効率よく行うための実験系の確立に向けて検討を行った。指標としては、KaiC単独のATPase活性とリン酸化サイクルの周期が候補となる。著しく高いATPase活性を示す変異体、もしくは著しく短周期化された変異体をテンプレートとし、そこに候補となる長周期変異を導入して効果を検証することにより、機能評価・スクリーニングに要する時間がある程度短縮される可能性がある。そこでテンプレート用に、温度補償性を有する短周期KaiC変異体(ATPase活性2倍、周期8時間)を設計・調製した。 以上、月面適応型概月時計の設計に向けて、短周期変異体を鋳型とする多重長周期変異の迅速探索基盤が整った。
|