研究課題
真核生物翻訳開始因子eIF3aは、生物の複雑化に伴いC末端に長い天然変性領域(IDR)を獲得した。脊椎動物では、酵母と比較して、このIDRが約400アミノ酸も伸長し(脊椎動物IDR, vIDR)、その約6割が荷電アミノ酸で構成されている。eIF3aは神経細胞においてRNA顆粒に局在し、静止状態では低い流動性を示すが、神経活動に応じて流動性が高くなる。この流動性の増加は、顆粒における局所翻訳の増加と密接に関連している。vIDRは、静止状態でeIF3aの流動性を低く維持し、局所翻訳を抑制するために必要である。vIDRの前半部分(vIDR1)は、10アミノ酸が20回程度繰り返したリピート配列であり、後半部分(vDR2)はvDR1とアミノ酸組成と長さが似ているが、配列はランダムである。今年度は、このようにアミノ酸組成と長さが類似しながら配列が異なる2つの領域の共通性と相違性に焦点を当て、研究を進めた。vIDR1あるいはvIDR2欠損させたeIF3aを神経細胞に発現させ、RNA顆粒における流動性を解析した。その結果、静止状態においてeIF3aの流動性を低く維持するためには、vIDR1とvIDR2の両者が必要であり、相加的であることが示された。そこで、一定のアミノ酸組成から成るIDRの一定の長さが重要であるという仮説を立てた。その検証のために、vIDR2をvIDR1に置換してリピート配列のみを2倍にしたeIF3a-(vIDR1)x2を作成し、神経細胞に発現させた。その結果、eIF3a-(vIDR1)x2は野生型eIF3aとは逆の神経活動応答性を示した。つまり、静止状態でもeIF3a-(vIDR1)x2の流動性が高く、神経活動により流動性と局所翻訳が低下した。この結果は、リピート配列のみではむしろ野生型vIDRとは逆効果をもたらし、vIDR1とvIDR2の配列の違いの重要性を示唆した。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Next Materials
巻: 2 ページ: 100070~100070
10.1016/j.nxmate.2023.100070
eLife
巻: 12 ページ: RP89376~RP89376
10.7554/eLife.89376
Heliyon
巻: 9 ページ: e17065~e17065
10.1016/j.heliyon.2023.e17065
日本白内障学会誌
巻: 35 ページ: 65~66
10.14938/cataract.35-014
https://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2023/07/07.html