研究実績の概要 |
破骨細胞は、単球・マクロファージ系の前駆細胞が細胞融合を繰り返すことにより形成される多核巨細胞である。申請者は、マクロファージおよび破骨細胞の起源細胞の同定および分化制御機構の解明を目指した基礎研究を推進してきた。その過程で、破骨前駆細胞には胎児卵黄嚢、胎児肝臓、骨髄造血幹細胞を起源とする複数の細胞集団が存在することが明らかになった。本研究では、遺伝子プロファイルが異なる破骨前駆細胞が分化・融合する過程を詳細に観察・追跡する基盤技術を創出することを目的としている。まず、胎児卵黄嚢、胎児肝臓、骨髄造血幹細胞を起源とする3種類の破骨前駆細胞を区別する遺伝子発現マーカーを同定した。その発現マーカーと3種類の組み換え酵素(Cre, Dre, phiC31o)を利用して、起源が異なる破骨細胞を独立した3種類の蛍光蛋白(Venus, mCherry, mCerulean)によって標識するマウスを樹立した。起源が異なる破骨細胞が融合することにより、複雑な蛍光輝度を示す破骨細胞が誕生し、その融合現象を明らかにした。さらに、それぞれの蛍光蛋白の遺伝子配列を認識可能なRNAプローブを作成し、In situ hybridization(ISH)法を用いてVenusおよびmCherryのRNA分子を検出することで、一つの破骨細胞毎の起源を同定することを試みた。さらに、細胞を区別する分子バーコード配列、gRNA、Cas9蛋白を破骨前駆細胞特異的に発現するマウスを樹立し、タモキシフェン投与によって遺伝子バーコードに変異を導入することを試みた。この変異は娘細胞へと伝達されるため、破骨前駆細胞の遺伝子バーコードに刻まれた傷をもとに細胞系譜を解析することが可能となる。本研究成果として、一つの成熟破骨細胞を構成する前駆細胞の多様性や細胞融合の規則性を網羅的に解析する新技術の創出に貢献した。
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