細胞核内での確固としたlncRNA機能を持つHSATIII RNAが、温度変化の時系列に沿って核から細胞質に局在を変化させ、mRNAに機能転換するというオリジナルな発見について詳細な解析を実施した。まず熱ストレス回復期におけるHSATIII RNAの挙動を追跡した結果、回復期の時間経過に沿って、細胞質でHSATIII構造体の数が増加し、それに伴って翻訳産物が検出されるようになることを観察した。さらに新たに回復期細胞から抽出したポリソーム画分にHSATIII RNAが取り込まれていることを検出した。次に、HSATIII RNAの核外輸送について調べたところ、HSATIIIが核内で形成する核内ストレス体(nSB)に、回復期進行に伴って核外輸送アダプターAly/Refが局在するようになること、さらにAly/Refの結合がnSBの主要構成因子のSAFBによって阻害されていることを見出した。さらにnSBの核内機能である「リン酸化るつぼ」や「メチル化リーダー因子のスポンジ」を阻害すると、HSATIIIの核外輸送が著しく阻害されることも明らかになった。このことから回復期初期のnSB機能によってHSATIIIのRNPリモデリングが誘発され、その結果Aly/Refの結合が促進されて、HSATIIIの一部が細胞質に輸送される可能性が示された。次に、HSATIIIポリペプチドの相互作用因子を免疫共沈降やTURBO-ID法によって検出したところ、ストレス顆粒RNA結合タンパク質やシャペロンが検出された。さらに、プラスミド由来のHSATIIIリピートペプチドの翻訳産物の細胞内局在を検出したところ、細胞先端部分や核内に局在することが確認された。特に、細胞先端部分のアクチン骨格重合部位で強く検出され、相互作用因子のRNA結合タンパク質ともにそこでRNP複合体を形成していることが示された。
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