研究課題/領域番号 |
22K19300
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
三嶋 雄一郎 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (00557069)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / リボソーム / イメージング |
研究実績の概要 |
mRNAがタンパク質へと翻訳される際に翻訳装置であるリボソームが衝突すると、特殊なリボソーム二量体構であるDisomeが生じる。このDisome は、リボソーム品質管理機構であるRQCとNGDにより解消される。しかしリボソーム品質管理機構がいつどこでどの程度起こっているのかをリアルタイムで検出する方法はまだ存在しない。本研究では、RQCとNGDを生体内で可視化する実験系を小型熱帯魚であるゼブラフィッシュの胚内で構築し、リボソームの衝突と品質管理の時空間的な分布を、個体発生過程において解明することに挑戦する。 本年度は、disome上で複合体を形成することが報告されているZnf598-GIGYF2-4EHP複合体に着目し、これらの相互作用がゼブラフィッシュでも生じているかの検証を行った。その結果、試験管内翻訳によって調整したゼブラフィッシュZnf598-GIGYF2-4EHPの3者の間での結合を、免疫沈降により確認することができた。 NGDをGFPレポーターを用いて可視化できるか検討するために、我々が同定したNGDの標的となる内在mRNA配列の検討を行い、リボソームの衝突とNGDを引き起こすことができる最小の配列要素を決定した。さらにその配列のアミノ酸置換変異体を作成し、NGD誘導活性を失わせることができる変異を複数同定した。一方で、NGD誘導活性を増強する変異を見つけることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Disome上で複合体を形成するタンパク質の候補を検討することはできたが、実際にin vivoにおける結合の特異性や強度の測定までは決定することができていないため、次年度以降に持ち越して検討を行う必要が生じている。また、NGDを再現するレポーター構築のための配列の検討において、NGD誘導活性を増強するような変異があることが望ましいが、これまでの結果ではまだそのような配列を見出せていない。レポーターの精度と感度を上昇させるためには追加の配列検証が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Disome上で生じるタンパク質複合体の検討と相互作用様式の検証を行い、PLA法やSplit GFP法で可視化する標的の検討を行う。また、より感度の良い複合体の形成検出方法として、split nano luciferaseを用いたHiBiT assayの導入を行う。今年度に確認したZnf598-GIGYF2-4EHP複合体の形成を利用し、SmBiTタグを付加した4EHPとLarge Bitタグを付加したGIGYF2の相互作用を中心に、化学発光による相互作用に検出系の構築を進める。 NGD再現レポーターについては、NGD誘導配列の作用機序についての理解を深めるために、より詳細な変異導入解析と、NGD誘導配列の情報生物学的解析を行う。これらの解析に結果から得られた情報をもとに、NGDをさらに効率よく誘導する配列を同定し、高感度かつ高効率なNGD可視化レポーターの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Disome上で形成される複合体の解析において、当初予期していなかったサンプル調整の問題が生じた。そのため、in vitro、in vivoにおけるサンプルの調整方法を再検討し、追加の検証実験を含め、次年度に実験を行う必要が生じた。また、NGDレポーターの最適化についても、より高感度かつ高効率となる配列条件について、追加の検討の必要性が生じた。こちらに関しても、当初の予定の一部を変更し、追加のコンストラクトの準備を行い、次年度に継続して実験を行う必要が生じた。
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