研究課題
原始的な後口動物、珍無腸動物門が新設された。そのナイカイムチョウウズムシから、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)系とともに、無脊椎動物で初めてグルコ/ミネラルコルチコイド・プロゲステロン・アンドロゲンの受容体族(SR)を同定した。祖先型と思われる。また、ムチョウウズムシの脂質の粗抽出画分にリガンド活性がみられた。新奇の原始リガンドが存在すると思われる。このリガンドの基のコレステロールを本種も持つが、合成に必要な遺伝子は欠損している。無腸ウズムシでは栄養の光合成産物と同様、体内に共生している藻類が供給している可能性がある。栄養の利用を統合制御するために、このグルココルチコイドの誕生というシンギュラリティの連鎖となったのかもしれない。進化の過程でのシンギュラリティは、共生等で他生物がもたらした?と妄想している。低温で生殖巣の発達が見られ、生殖細胞マーカーである nanos の発現が増加した。この時、SRの発現も増加した。共生藻からの主な供給物であるグルタミンやコレステロールを分解するglutaminase と hormone-sensitive lipase も増加した。以上の発現の相関から、低温では共生藻から供給される栄養の代謝が活性化することにより、性成熟が進行し、SRは、環境による代謝の変化を制御していると考えられる。これこそが基盤的機能かもしれない。一方、後口動物におけるGnRHの祖先型機能は、直接的に性成熟である可能性が示された。現在、この数百の細胞からなる中枢神経系の原型に、1細胞トランスクリプトームを駆使し、構成細胞の固有特性やGnRH神経ネットワークなど細胞・分子基盤を包括的に解明しようとしている。非モデル生物でも1細胞トランスクリプトーム、遺伝子編集による機能解析が急速に行われている。実際、当実験所に採用した中村は前左右相称動物の有櫛動物や刺胞動物で成果を挙げている。
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