本研究では、①浸透圧モニタリングシステムの根幹をなす人工プロモーターの解析と、②浸透圧モニタリングマウスの構築を行った。 ①浸透圧に感度良く応答し、DsRedを発現する独自の人工プロモーターを導入した細胞について、浸透圧への特異性の検証を行い良好なstable細胞の取得に成功した。昨年度までに取得したこの人工プロモーターのstable細胞を用いて、蛍光タンパク質発現を駆動するNFAT5のノックダウンを行ったところ、高浸透圧依存的な蛍光シグナルの増強が完全に消失したことから、浸透圧特異的な転写因子に非常に強く依存するレポーターであることを確認できた。また、この細胞の24時間までタイムラプス画像をImage Jで自動解析するプログラムを開発し、それを利用することで多数の細胞からシングルセル情報を得ることが可能になった。 ②昨年度トライした人工プロモーターを導入したトランスジェニックマウスの作成は、遺伝子の挿入までは確認できたがin vivoでの蛍光発現が観察できなかった。そのため、新たにBINDSが提供する「疾患モデル動物提供」(薬効・安全性評価ユニット)に応募し採択されたため、BINDSの協力のもとTol2トランスポゼースを利用したトランスジェニックマウスの作成を試みた。しかしながら、この方法ではマウスゲノムへの人工プロモーターの挿入が確認できなかったことから、同BINDSの協力のもと、改めてCRISPR/Cas9を利用した遺伝子導入のシステムを使ってトランスジェニックマウスの作成に再度挑戦することにした。トランスジェニックマウスの取得が遅れたため、WTマウスの腹腔マクロファージを利用して低・高浸透圧刺激をかけた際のRNA-Seqを行い、マクロファージの中で浸透圧依存的に発現変化する遺伝子の同定を行った。
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