環境DNAメチル化解析を一般生物種まで将来的に展開する基礎として、組織由来のDNAと環境DNAの間でのメチル化の特徴の違いを検討した。ゼブラフィッシュの組織及び飼育水に由来するDNA試料をRRBS(Reduced Representation Bisulfite Sequencing)によってメチル化パターン分析し、CpG、CHG、CHHの三つのメチル化領域に焦点を当てて解析した。結果、CpG領域では組織由来の試料で、その他の領域では飼育水由来の試料でメチル化率が高かった。このことから、環境DNA分析によって得られるメチル化パターンは個体を分析した場合と異なる可能性が見出された。前年度に実施した別マーカーでの実験では組織由来のDNAと環境DNAのメチル化パターンは一致していたことと合わせて、環境DNAのメチル化解析を行う際には開発するマーカーごとに個体試料との比較検証が不可欠であることを示唆している。 また、環境DNAメチル化解析のさらなる発展として、メチル化状態の測定と環境RNA分析を用いた分析系を併用することによるより高精度な分析法の開発を試みた。水槽で飼育したゼブラフィッシュを対象とし、HSP(heat shock protein)遺伝子とベータアクチン遺伝子の環境mRNA量の測定を試みた。その結果、両遺伝子について環境mRNA量の測定が可能であることが明らかになった。この成果は、今後繁殖に関連するマーカーとして、環境DNAのメチル化状態だけでなく、環境mRNAを併用することで繁殖活動のより高精度な推定が可能となることを示唆している。 これらの研究と平行して、前年度までに実施した実験の結果をまとめ、国際/国内学会で発表し、国際査読誌に投稿するとともに、プレプリントとして公開した。
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