睡眠の質を決める重要な要素である睡眠構築(レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル)は、加齢や疾患発症の影響を受ける。睡眠の量に加えて、睡眠の質の変化が認知症を始めとする様々な疾患のリスク因子であることから、有効な改善方法の開発が求められる。我々はマウスにおいて、特定の飼料がレム睡眠や徐波睡眠(深いノンレム睡眠)を有効に増加させる可能性を見出した。そこで本研究では、食事が睡眠構築に影響を及ぼすメカニズムの解明を目指している。今年度は、前年度までに作製した、特定の神経伝達ペプチドを放出し、かつ、DNA recombinaseである Creを発現する神経細胞特異的にDTAを発現することでその神経細胞を破壊できる遺伝子組換えマウスを活用し、どのようなサブタイプのニューロンや脳部位が、食事に依存した睡眠構築の制御に関わるのかを検討した。様々なCreマウスと掛け合わせて睡眠構築を計測した結果、特定の神経ペプチドと神経伝達物質の組合せを産生・放出するニューロンが関与することが強く示唆された。さらに、関与する特定の脳部位も特定することができた。これらの結果から、食事が睡眠構築に作用する神経回路機構の理解が大きく進んだ。さらに、食事のどのような要素(特定の栄養成分、硬さ等)が睡眠構築に作用するかの検証も進めた。各社が提供する様々な飼料が睡眠構築に与える影響を評価した。その結果、睡眠構築に影響を与える飼料と与えない飼料の共通性・違いに注目することで、ある程度要素を絞り込むことに成功した。
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