研究実績の概要 |
神経活動依存的なシナプスの変化は、神経回路の機能的な発達や学習・記憶に不可欠である。神経活動に伴ってシナプスの構造や機能が変化する際には、シナプス部位のプロテオームがダイナミックに変化する。細胞体由来のタンパク質が遠く離れたシナプスまで輸送されるには時間がかかるので、シナプス部位へのタンパク質の機動的な供給機構として樹状突起での局所合成がある。これまでに樹状突起での局所合成がシナプスの可塑性に重要な役割を果たしていることはわかっているが、局所合成の実体には不明な点が多い。その理由は、脳組織中の神経細胞において、樹状突起中の転写産物(mRNA)とその翻訳産物(タンパク質)の両方の局在や動態をシナプスレベルの解像度で同時に観察できていないからである。そこで本研究では、脳組織内で内在性に発現するmRNAおよびタンパク質の細胞内局在を同時イメージングする方法を開発し、神経活動依存的にシナプスが変化する際のmRNAおよびタンパク質の時空間的動態を単一シナプスレベルの解像度で理解することを目指す。2022年度は、個体マウスの脳内の一部の細胞において、生体脳内ゲノム編集技術SLENDR/vSLENDR(Mikuni et al., Cell 2016; Nishiyama et al., Neuron 2017)によりCaMKIIの遺伝子座にGFPタグ配列を挿入した。そのうえで、ゲノム編集したマウスを灌流固定し、脳薄切切片を作製し、CaMKIIのmRNAをRNAscope法(高感度RNA in situ hybridization)で標識し、mRNAの細胞体および樹状突起での局在を検出する予備的データを得た。
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