研究課題/領域番号 |
22K19363
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 和人 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90211903)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 化学遺伝学 / 神経活動促進 / イオン透過型受容体ファミリー / 線条体 / 運動制御 |
研究実績の概要 |
我々の研究グループは、これまでに昆虫の興奮性イオン透過型受容体 (ionotropic receptors/IRs) を利用して目的の神経細胞種の活動を選択的に促進させる新規の化学遺伝学技術 (IR-mediated neuronal activation/IRNA) を開発し、フェニル酢酸に高親和性を持つIR84a受容体とその共役受容体であるIR8a受容体からなる複合体を利用した。本研究では、新規のリガンドとしてプロピオン酸に反応するIR75aとIR8a複合体を利用し、線条体ニューロンをモデルに研究を進め、異なるリガンドを用いて複数の神経細胞種の機能を時間・空間的により精密に制御するIRNA技術を確立することを目的とした。本年度は、培養細胞系におけるIR75a/IR8a複合体の反応性の検証するために、レンチウィルスベクターを用いてIR75aとIR8aを共発現する実験系の構築を試みた。受容体発現の検出のために、IR75aについては、シグナルペプチド(推定領域)をヒトカルシニューリンのシグナルペプチドに置換し、EGFPとIR75a成熟タンパク質を融合し、2Aペプチドを介してHAタグを付加したIR8aに連結した。このベクターを HEK293T 細胞あるいは神経芽細胞種 NG108細胞に遺伝子導入し、両者の受容体の発現を免疫組織化学により確認した。最初に選択したシグナルペプチドをヒトカルシニューリンのシグナルペプチドに置換した際は、ほとんど受容体の発現が観察されなかった。そのためシグナルペプチドをより長めに設定し、その領域をカルシニューリンのシグナルペプチドに置換することにより発現量を増加させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞系におけるIR75aとIR8aを共発現する実験系の構築を試みたが、IR75aについてはシグナル配列の領域が未知であった。そのため、シグナル配列の予測ソフトウェアを利用し、この領域の推定を行い、従来のIR84aで用いていたヒトカルシニューリンのシグナルペプチドに置換し、EGFPとIR75a成熟タンパク質の融合遺伝子を作製した。これを、2Aペプチドを介してHAタグを付加したIR8aに連結し、発現用のベクターを作製し、HEK293T 細胞あるいは神経芽細胞種 NG108細胞に遺伝子導入した後、両者の受容体の発現を免疫組織化学により確認した。しかし、IR75aの発現をほとんど観察することができなかった。そのため、シグナルペプチドをより長めに設定し、その領域をカルシニューリンのシグナルペプチドに置換することにより発現量を増加させることを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、新しく作成した発現量を高めたベクターを利用して、IR75aとIR8aの共発現こを誘導し、プロピオン酸 (PrAc) に対する反応性(発火頻度と膜電位の変化)をパッチクランプ法により測定する。細胞での機能を確認後、生体内でのIR75a/IR8a複合体の反応性の検証に取り組む。このため、線条体直接路細胞にCre組換え酵素を発現する遺伝子改変ラット系統 (Tac1-Cre)を利用し、Cre-loxP 系に依存して遺伝子発現を誘導するウィルスベクターをラット線条体に注入し、EGFP-IR75aとHA-IR8aの共発現を確認した後、スライスを作製し、EGFP 陽性細胞の PrAc 反応性(発火頻度と膜電位の変化)を解析する。また、ベクターを注入したラットの線条体に PrAc を注入し、神経終末領域(黒質)でのγ-アミノ酪酸 (GABA)の分泌をマイクロダイアリシスにより解析する。
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