研究課題
挑戦的研究(萌芽)
胎生期には母由来の免疫グロブリン(Ig)が胎盤経由で流れ込んでいるが、まだ血液脳関門が未熟なため、脳傷害性のIgが脳に流入するリスクがあり、それを凌駕する意義があると考えられる。本研究では、まず胎生期脳に検出されるIgはほぼ全てが母由来IgGであることを示した。次に、母由来IgGを受け取る胎児脳側の細胞を同定した。さらに、母由来の特に胎生期のIgGが欠損すると生後に大脳皮質抑制性ニューロンが異常に減少してしまうことを見出した。
発生神経生物学
胎生期の脳に母由来の免疫グロブリン(抗体分子Ig)が存在していることは古くから知られており、感染予防のためと考えられている。しかしながら、通常の胎生期脳には明らかな感染や炎症はなく、何らかの未知の機能が母由来Igにはあるのではないかと考えた。本研究では、母由来Igが生後の大脳皮質抑制性ニューロンの生存維持に重要な役割を有することを見出したが、抑制性ニューロンの異常は様々な精神神経疾患の病態と関係することが注目されており、臨床的にも意義のある成果と考えられる。