研究課題
腫瘍にはその不均一性が存在し、EGFR変異陽性肺腺がんにおいては、HER2やMET等を介した副次的生存経路の活性化やT790M変異により分子標的薬に対して耐性を示す細胞が、治療を行う前の腫瘍内に既に存在することが示されている。このような初期的な薬物治療に抵抗性を持つ細胞は寛容性細胞と呼ばれ、長期的な治療を行ううえでの耐性細胞の供給源となっている。よって、がん細胞集団における寛容性細胞の理解とそこを標的とした治療戦略の立案が必要である。本研究では、腫瘍内不均一性に着目し、単細胞由来クローンの取得から寛容性細胞の代謝的特徴を明らかとし、分子標的薬に対する治療効果を高める戦略の立案を目的としている。特に上記肺がん細胞において、分子標的薬の曝露時にミトコンドリア機能が亢進する様子や、寛容性細胞において亢進している特徴的な代謝経路の同定に成功している。また、その代謝経路を各種阻害剤を用いて抑制したところ、寛容性細胞の生存率を低下させられることが分かった。また、興味深いことに、分子標的薬に対して高感受性を示す細胞と低感受性の細胞とを共培養したところ、全体が低感受性になることが示され、低感受性の細胞から何かしらシグナルが発せられて細胞集団を低感受性にしていることが示唆された。それは、がん細胞集団にとっては、生き残るための有利な戦略といえ、生体が持つ重要な恒常性維持機構であろう。具体的なファクターまで特定することはできなかったが、細胞間で巧妙に情報伝達が行われ、集団形成されているものと考えられる。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Cell Death Discovery
巻: 10 ページ: 1~13
10.1038/s41420-024-01933-4
Molecular and Cellular Endocrinology
巻: 586 ページ: 112196~112196
10.1016/j.mce.2024.112196