本研究ではエクソソームを分泌する親細胞として、発光酵素が遺伝子導入されたヒト前立腺がん(PC-3)細胞株を用いた。PC-3細胞を播種してから48時間連続培養後に回収した培地(連続培養)、開発した培地循環装置を用いて細胞播種から24時間、48時間の間に回収した培地を精製し、粒子を得た。回収した粒子について、動的光散乱法を利用し、粒子径を測定した。その結果、両システムにより精製した粒子の粒子径は約200 nm程度であり、粒子径に大きな差は見られなかった。回収した粒子がエクソソームであることを明らかにするために、ウェスタンブロットによりエクソソームマーカータンパク質であるCD63(30~60 kDa)の検出を試みた。その結果、連続培養だけでなく、培地循環装置により回収した粒子においてもCD63タンパク質の発現が確認された 。 次に、循環装置と連続培養それぞれで回収したエクソソームについてN-lucの発光値を測定することで産生量を比較した。結果、エクソソーム産生量が約1.8倍になった。また、エクソソーム回収後の細胞数は装置回収により20%減少していた。次に、回収したエクソソームの受容細胞への影響を評価するために、細胞にエクソソームを添加し、増殖度を評価したところ、装置回収エクソソーム添加群では連続培養回収エクソソームと比較し、増殖度が高くなった。最後に、回収した両エクソソームの性質の違いを明らかにするために、各エクソソームをPC-3細胞に添加してから24時間後に細胞を溶解し、N-luc由来の発光強度を測定することで細胞への取り込み率を算出した。その結果、連続培養により回収したエクソソームと比較し、装置回収したエクソソームは細胞内への取り込み量が顕著に増加した。
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