研究課題
モノクローナル抗体(MoAb)はバイオ医薬品の中で有望であり、抗体-薬剤複合体や二重特異性抗体へ発展を遂げている。しかし、これまでMoAb自体を核内に移行させる技術はなかった。そこで本研究は、1)細胞膜から核内移行する抗原分子の探索とそのMoAb作成、2)核内移行するMoAbスクリーニング法の開発とエピトープ解析、3)免疫細胞、がん細胞での新規MoAbの核内移行とその機能解析、を行う。初年度は、細胞膜表面抗原に対するMoAbパネルおよびsingle chain Fv(scFV)ライブラリー(大腸癌、リンパ球)を用いて、細胞をMoAb処理後に核局在マーカー(核膜孔Nup98、核膜Lamin A、核スペックルSC35、核小体Fibrillarin、エンハンサー領域 RNA polymerase II)と抗原の核内共在をDuolink in situ法で解析し、核内に移行し局在する細胞膜表面抗原を選別した。その候補抗原をBaculoウイルス発現系で作出・精製しBalb/cマウスへ免疫後、黄色蛍光分子Venus付加ライブラリーを作成した。本年度は、scFvクローンの選別を行い、抗原発現細胞によるCODEX technology解析により、抗原・抗体の核内共存クローンの反復選別を行い、核内に同時に抗原・抗体の蛍光発色を示すscFvクローンを得た。このクローンのうち、13B1抗体はin vitroでがん細胞特異的に核内移行を示すことが明らかとなった。今後、認識分子の同定とエピトープマッピングを通じて核内移行抗体の機能を明らかにする予定である。MoAbを核内まで輸送させることができれば、ADC化や二重特異性抗体化により、これまで不可能であった核内への機能抗体/分子の核移行による核酸合成阻害や修復修飾、エンハンサー機能の修飾による転写調節、核輸送の促進・阻害などが可能となると考える。
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