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2022 年度 実施状況報告書

アミノ酸アベイラビリティによる代謝制御を担うトランスメンブランシグナル機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K19404
研究機関大阪大学

研究代表者

金井 好克  大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60204533)

研究分担者 大垣 隆一  大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20467525)
岡西 広樹  大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70792589)
徐 旻恵  大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20910201)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワードアミノ酸 / 受容体 / 輸送体 / シグナル情報伝達
研究実績の概要

アミノ酸は、シグナル分子としてタンパク質合成をはじめとする様々な細胞機能を制御するが、アミノ酸がシグナル分子として機能するためには、細胞が何らかの機序でアミノ酸濃度をモニターする必要がある。従来の研究では、細胞内のアミノ酸を感知する「細胞内センサー」が報告されてきたが、本研究では、これまでに想定されていなかった、細胞外のアミノ酸を感知する「細胞膜センサー」を同定してその分子機能を解明することを目的とする。これにより、2つの異なるアミノ酸感知システムが、細胞機能の制御を行うという、細胞内シグナル情報伝達の新しい原理が提示される。さらに、細胞膜センサーに作用する薬物の開発は、アミノ酸シグナル系の破綻が関与する糖尿病、がん、肥満、メタボリック症候群などの疾患の治療へと繋げる方向で可能性を探求していく。これまでの同定されている細胞内センサーは、細胞内のアミノ酸に応答してセリン/スレオニンキナーゼ複合体mTORC1へとシグナルを送るものであったが、今回、特定の細胞が、細胞内センサーに加えて、細胞膜上で細胞外のロイシン濃度を感知する細胞膜センサーを有することを見出した。この細胞膜センサーも、細胞内センサーと同様にmTORC1へとシグナルを送ることが明らかになった。さらに、細胞内センサーは活性化せず、細胞膜センサーを介してmTORC1を活性化する特異的アゴニストを見出した。この特異的なアゴニストの発見は、細胞膜センサーの存在に確証を与えるものである。本研究により、細胞膜ロイシンセンサーの分子実体を解明し、そのシグナル情報伝達機構を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞は、アミノ酸量を感知して転写・翻訳を制御するため、アミノ酸自身がシグナル分子として機能しているが、これまでに細胞内アミノ酸濃度を感知してmTORC1へとシグナルを送る細胞内センサーであるロイシンセンサー等が同定されている。今回、細胞外のアミノ酸を感知する「細胞膜センサー」の存在を支持する事実として、ほとんどの細胞株ではロイシンによるmTORC1活性化が細胞へのロイシン取り込みを担うアミノ酸トランスポーターの阻害薬により抑制されるのに対して、特定の細胞では、ロイシンによるmTORC1活性化が細胞へのロイシン取り込みを担うアミノ酸トランスポーターの阻害薬により抑制されないことが明らかになった。これは、その細胞では、ロイシンによるmTORC1活性化は、細胞内センサーによるのではなく、細胞外のアミノ酸を感知する新たな細胞膜センサーが存在し、それが主要な役割を担っていることを示唆している。さらに、今回、細胞膜センサーを介してmTORC1を活性化するアミノ酸誘導体を見出した。このアミノ酸誘導体は、細胞内センサーには認識されず、細胞膜センサーの特異的アゴニストとなる。この特異的アゴニストの発見により、細胞膜センサーの存在にさらに確証が与えられた。この特異的アゴニストを見出した利点を活かして、特異的アゴニストによるアミノ酸シグナルの活性化を評価するモニター細胞の作製を進めている。そのモニター細胞を用いて、細胞膜センサーの分子実体と、そのシグナル情報伝達機構の解析を行う。

今後の研究の推進方策

「現在までの進捗状況」に記載の細胞膜センサーの特異的アゴニストによるアミノ酸シグナルの活性化を評価するモニター細胞を活用し、以下の検討を継続する。まず、「細胞膜ロイシンセンサーを介するシグナル機構の解明」においては、細胞膜センサーの特異的アゴニストによる細胞内のリン酸化変動の網羅的解析を継続し、細胞膜センサーの刺激によって惹起されるシグナル経路を明らかにする。さらに、機能性タンパク質のリン酸化変動から、起こり得る細胞機能の変化を推察し、実験的に検証する。「細胞膜ロイシンセンサーの実体解明」においては、細胞膜ロイシンセンサーは、細胞膜上での存在量が少ないことが想定されるため、生化学的手法での同定は困難が予想され、分子の機能に依拠した機能発現クローニングによる分子同定を実施する。そのために、検出感度を向上させるため、上記のモニター細胞を用いて、ポジティブスクリーニングが可能なモニター系を構築する。そのモニター系により、細胞膜ロイシンセンサーが発現しているヒト培養細胞株から作製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、細胞膜ロイシンセンサーの同定を完了させる。同定に続き、同定された細胞膜センサーの機能解析を実施する。細胞膜センサーの遺伝子ノックダウン・ノックアウトによる発現抑制実験や、遺伝子導入による過剰発現実験などを用いて、得られた分子が求める細胞膜センサーであることを確認すると同時にその機能的意義を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度において、細胞膜センサーの特異的アゴニストの有用性が判明したため、細胞膜センサーの分子同定前に、特異的アゴニストを用いて細胞膜センサー下流のシグナルの解析を行っておくことが有用であると判断し、特異的アゴニストを用いた薬理学的解析を優先して行った。そのため、費用のかかる機能発現クローニングによる分子同定は時期を遅らせたことにより、令和4年度の当初予算の一部を次年度に回した。この次年度使用額については、令和5年度において、機能発現クローニングを実施するため、そこで使用する計画である。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [国際共同研究] Qingdao University(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Qingdao University
  • [国際共同研究] King's College Hospital/The University of Oxford/University of Cambridge(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      King's College Hospital/The University of Oxford/University of Cambridge
  • [雑誌論文] LAT1 expression influences Paneth cell number and tumor development in ApcMin/+ mice2023

    • 著者名/発表者名
      Sui Yunlong、Hoshi Namiko、Ohgaki Ryuichi、Kong Lingling、Yoshida Ryutaro、Okamoto Norihiro、Kinoshita Masato、Miyazaki Haruka、Ku Yuna、Tokunaga Eri、Ito Yuki、Watanabe Daisuke、Ooi Makoto、Shinohara Masakazu、Sasaki Kengo、Zen Yoh、Kotani Takenori、Matozaki Takashi、Tian Zibin、Kanai Yoshikatsu、Kodama Yuzo
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology

      巻: 58 ページ: 444~457

    • DOI

      10.1007/s00535-023-01960-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Phosphoproteomics revealed cellular signals immediately responding to disruption of cancer amino acid homeostasis induced by inhibition of l-type amino acid transporter 12022

    • 著者名/発表者名
      Okanishi Hiroki、Ohgaki Ryuichi、Xu Minhui、Endou Hitoshi、Kanai Yoshikatsu
    • 雑誌名

      Cancer & Metabolism

      巻: 10 ページ: 18

    • DOI

      10.1186/s40170-022-00295-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Targeting L-type amino acid transporter 1 in urological malignancy: Current status and future perspective2022

    • 著者名/発表者名
      Pae Sangjon、Sakamoto Shinichi、Zhao Xue、Saito Shinpei、Tamura Takaaki、Imamura Yusuke、Sazuka Tomokazu、Reien Yoshie、Hirayama Yuri、Hashimoto Hirofumi、Kanai Yoshikatsu、Ichikawa Tomohiko、Anzai Naohiko
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 150 ページ: 251~258

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2022.10.002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Crystal structure of a nucleotide-binding domain of fatty acid kinase FakA from Thermus thermophilus HB82022

    • 著者名/発表者名
      Nakatani Maya、Nakahara Shun-ya、Fukui Kenji、Urano Momoka、Fujii Yuki、Murakawa Takeshi、Baba Seiki、Kumasaka Takashi、Okanishi Hiroki、Kanai Yoshikatsu、Yano Takato、Masui Ryoji
    • 雑誌名

      Journal of Structural Biology

      巻: 214 ページ: 107904~107904

    • DOI

      10.1016/j.jsb.2022.107904

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pharmacologic inhibition of LAT1 predominantly suppresses transport of large neutral amino acids and downregulates global translation in cancer cells2022

    • 著者名/発表者名
      Nishikubo Kou、Ohgaki Ryuichi、Okanishi Hiroki、Okuda Suguru、Xu Minhui、Endou Hitoshi、Kanai Yoshikatsu
    • 雑誌名

      Journal of Cellular and Molecular Medicine

      巻: 26 ページ: 5246~5256

    • DOI

      10.1111/jcmm.17553

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structural insights into inhibitory mechanism of human excitatory amino acid transporter EAAT22022

    • 著者名/発表者名
      Kato Takafumi、Kusakizako Tsukasa、Jin Chunhuan、Zhou Xinyu、Ohgaki Ryuichi、Quan LiLi、Xu Minhui、Okuda Suguru、Kobayashi Kan、Yamashita Keitaro、Nishizawa Tomohiro、Kanai Yoshikatsu、Nureki Osamu
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 4714

    • DOI

      10.1038/s41467-022-32442-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Functional coupling of organic anion transporter OAT10 (SLC22A13) and monocarboxylate transporter MCT1 (SLC16A1) influencing the transport function of OAT102022

    • 著者名/発表者名
      Ohtsu Naoko、Ohgaki Ryuichi、Jin Chunhuan、Xu Minhui、Okanishi Hiroki、Takahashi Ryo、Matsui Akiko、Kishimoto Wataru、Ishiguro Naoki、Kanai Yoshikatsu
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 150 ページ: 41~48

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2022.06.003

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tmem174, a regulator of phosphate transporter prevents hyperphosphatemia2022

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Sumire、Shiozaki Yuji、Hanazaki Ai、Koike Megumi、Tanifuji Kazuya、Uga Minori、Kawahara Kota、Kaneko Ichiro、Kawamoto Yasuharu、Wiriyasermkul Pattama、Hasegawa Tomoka、Amizuka Norio、Miyamoto Ken-ichi、Nagamori Shushi、Kanai Yoshikatsu、Segawa Hiroko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 6353

    • DOI

      10.1038/s41598-022-10409-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] SGLT2阻害薬の多面的な作用とメカニズム2023

    • 著者名/発表者名
      金井 好克
    • 学会等名
      KOWA Web Conference
    • 招待講演
  • [学会発表] トランスポーターの病態形成における役割と治療標的としての意義2023

    • 著者名/発表者名
      金井 好克
    • 学会等名
      第56回日本痛風・尿酸核酸学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] SGLT2阻害薬の多面的な作用と作用メカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      金井 好克
    • 学会等名
      伊勢崎佐波医師会学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 手作りのサイエンス トランスポーターの分子同定から創薬へ2022

    • 著者名/発表者名
      金井 好克
    • 学会等名
      第16回トランスポーター研究会年会
  • [学会発表] がん細胞由来エクソソーム上におけるアミノ酸トランスポーターLAT1(SLC7A5)の発現:予後および診断バイオマーカーとしての潜在的価 値2022

    • 著者名/発表者名
      大垣 隆一, Liu Yumiao, Xu Minhui, 岡西 広樹, 金井 好克
    • 学会等名
      第96回 日本薬理学会年会
  • [学会発表] アミノ酸トランスポーターLAT1の阻害はがん細胞における大型中性アミノ酸輸送を顕著に低下させグローバルな翻訳抑制を誘導する2022

    • 著者名/発表者名
      西窪 航, 大垣 隆一, 岡西 広樹, 奥田 傑, Xu Minhui, 遠藤 仁, 金井 好克
    • 学会等名
      第96回 日本薬理学会年会
  • [学会発表] がん特異的アミノ酸トランスポーターLAT1阻害薬JPH203による胆道がん細胞内アミノ酸プールの破綻に伴うリン酸化プロテオーム解析2022

    • 著者名/発表者名
      岡西 広樹, 大垣 隆一, Xu Minhui, 遠藤 仁, 金井 好克
    • 学会等名
      第142回 日本薬理学会近畿部会
  • [学会発表] Evaluation of LAT1 expression in patients with lung cancers and mediastinal tumors: [18F]FBPA PET study with immunohistopathological comparison2022

    • 著者名/発表者名
      T. Watabe, N. Ose, S. Naka, E. Fukui, T. Kanou, S. Funaki, H. Sasaki, T. Kamiya, K. Kurimoto, E. Shimosegawa, H. Kato, R. Ohgaki, Y. Kanai, Y. Shintani
    • 学会等名
      EANM'22 - Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine
    • 国際学会
  • [学会発表] アミノ酸トランスポーターLAT1阻害薬が腫瘍細胞の大型中性アミノ酸輸送とタンパク質合成に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      西窪 航, 大垣 隆一, 岡西 広樹, 奥田 傑, Xu Minhui, 遠藤 仁, 金井 好克
    • 学会等名
      第141回 日本薬理学会近畿部会

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公開日: 2023-12-25  

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