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2022 年度 実施状況報告書

個体の行動に伴う生体脳イオンダイナミクスの可視化

研究課題

研究課題/領域番号 22K19411
研究機関生理学研究所

研究代表者

堀内 浩  生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特別訪問研究員 (60760733)

研究分担者 澤田 和明  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40235461)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード細胞外空間 / イオンダイナミクス / CMOSセンサ / イメージング / 自由行動
研究実績の概要

脳高次機能は細胞外空間を介した脳細胞間情報伝達によって発現するが、生体において細胞外の化学的環境がどのような時空間的規模で変容し、脳活動に影響を与えているのかはわかっていない。これには高精細な細胞外イメージング技術がないことが大きな障壁となっている。本研究では、独自に開発を進めている小型軽量化CMOSイオンイメージセンサを生体脳に適用し、個体の行動に伴うイオンダイナミクスを捉えることを目的とする。
本年度は、自由行動下での計測を目的として従来型の基板部分を大幅に小型軽量化し、参照電極を内蔵した新型センサのプロトタイプの開発を完了し、生体検証の段階に移行した。まず、生体マウスの大脳皮質および海馬における生体検証によって、出力電位の安定性を基に参照電極の最適化を行いその材料を決定した。薬理学的手法によって、神経活動に依存して電位が変化したことから、確かに細胞外pHが検出できていることを確認した。次に、自由行動を妨げない柔軟性のあるケーブルの材質ならびに長さを決定し、自由行動中の細胞外pHを計測した。様々に条件検討を行った結果、体動によるノイズや不具合は発生せず、少なくとも埋植2週間程度まで安定して記録することができた。今後、疾患モデルや個体動物の行動に伴って細胞外イオンがどのように変動するのかを明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本イメージセンサは、半導体集積回路上にセンサがアレイ状に並んでおり、表面上のイオン結合による表面電荷の変化によって、高い時空間解像度でイオン像が撮影できる。しかしながら、これまで開発してきたセンサは質量や大きさの観点からマウスなどの小動物の行動を妨げるため、自由行動中のイオン計測を行うことが困難であった。
本年度は自由行動下での計測を目的として従来型の基板部分を75%小型化、80%軽量化した新型センサのプロトタイプ(チップ幅1mm, 厚さ0.1mm, 画素数256×32, 画素ピッチ5μm, 時間分解能20msec, 重さ1g)を開発し、生体検証による内蔵型参照電極の最適化、生体からの細胞外pH記録、自由行動下での計測の達成を目標にした。様々に生体検証を行った結果、内蔵型参照電極の材質は塩化銀が最適であり、それを用いて生体マウスの大脳皮質および海馬から細胞外pHを記録することに成功した。自由行動下計測に向けケーブルなども選定して、マウスの体動による影響を排除した安定した細胞外pH計測に成功した。したがって、当初の目標を十分に達成できたと判断した。

今後の研究の推進方策

本年度は自由行動下での計測を目的として従来型センサを小型軽量化したプロトタイプを開発し、生体検証によって、自由行動下でのイオン計測を達成した。今後は疾患モデル動物を用い、個体行動に表現される病態発現に伴って細胞外pHがどのように変化するかを明らかにする。さらに様々な行動試験を行い、特定の行動中におけるイオン変化についても検証したい。

次年度使用額が生じた理由

研究計画が順調に進行し、試薬や部材の消費を抑えることができたため、未使用額を消耗品に充て、センサの生体検証を進める予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Spatiotemporal Analysis of Microglial Ca2+ Activity at Single-Cell Resolution2022

    • 著者名/発表者名
      Horiuchi Hiroshi、Cheung Dennis Lawrence、Nabekura Junichi
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: 190 ページ: e64300

    • DOI

      10.3791/64300

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 細胞外イオンの時空間分布を読みだす技術開発と生体応用2023

    • 著者名/発表者名
      堀内 浩
    • 学会等名
      第1回脳化学研究会
  • [学会発表] CMOSイオンイメージセンサによって捉える生体脳のイオンダイナミクス2023

    • 著者名/発表者名
      堀内 浩
    • 学会等名
      生理学研究所-山梨大学-豊橋技術科学大学合同研究交流会
  • [学会発表] ミクログリアの機能応答と時空間多様性2023

    • 著者名/発表者名
      堀内 浩、石田順子、鍋倉淳一
    • 学会等名
      日本生理学会第100回記念大会
  • [学会発表] マウスの自由行動実験に向けた参照電極内蔵型in-vivoイメージセンサの製作と評価2023

    • 著者名/発表者名
      間所 麻衣, 中村 優斗, 堀内 浩, 小林 知子, 木村 安行, 堀尾智子, 土井 英生, 崔 容俊, 高橋 一浩, 野田 俊彦, 鍋倉 淳一, 澤田和明
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Spatiotemporal divergence of microglial Ca2+ activity2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Horiuchi, Junko Ishida, Junichi Nabekura
    • 学会等名
      Neuro2022
  • [学会発表] 脳内免疫細胞における活動情報の時空間解析2022

    • 著者名/発表者名
      堀内 浩、石田順子、鍋倉淳一
    • 学会等名
      日本科学振興協会 第1回総会・キックオフミーティング
  • [学会発表] 覚醒・自由行動マウスの脳内pHイメージングに向けたin-vivo計測システム2022

    • 著者名/発表者名
      間所 麻衣,木村 安行,堀尾 智子,堀内 浩,石川 知子,土井 英生,崔 容俊,高橋 一浩,野田 俊彦,鍋倉 淳一,澤田 和明
    • 学会等名
      第39回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
  • [学会発表] 非拘束自由行動実験に向けたin vivoイメージングシステムの構築と実証2022

    • 著者名/発表者名
      間所 麻衣, 堀内 浩, 小林 知子, 木村 安行,堀尾 智子, 土井 英夫, 崔 容俊, 高橋 一浩, 野田 俊彦, 鍋倉 淳一, 澤田 和明
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 生体刺入型pHイメージセンサの開発と自由行動マウス脳内への応用2022

    • 著者名/発表者名
      間所 麻衣,堀内 浩,小林 知子,木村 安行,堀尾智子, 崔 容俊, 高橋 一浩, 野田 俊彦, 鍋倉 淳一, 澤田 和明
    • 学会等名
      令和4年度電気学会E部門総合研究会 バイオ・マイクロシステム研究会

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公開日: 2023-12-25  

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