研究実績の概要 |
細胞における人為的代謝制御法の開発は人類の夢である。我々はMieapタンパク質がミトコンドリアに膜のないオルガネラ(Mieap液滴)を形成し、ミトコンドリアに特異的なリン脂質であるカルジオリピンの代謝反応(生合成とリモデリング)を区画化・促進している可能性を見出した。Mieap液滴はカルジオリピンの代謝を促進して、ミトコンドリアのエネルギー産生を増加させ、逆に酸化ストレスを抑制することで、健常なミトコンドリア機能の実行を保証する。この機能は老化や疾患の予防に大変重要と考えられる。本研究課題では、Mieap液滴による代謝連続反応制御のメカニズムを解明し、その応用による人為的代謝制御法を開発することで、人類の健康長寿社会への貢献を目指す。具体的には(1)カルジオリピン代謝酵素(TAMM41, PGS1, CRLS1, PTPMT1, CRLS1, TAZ, PLA2G6)とMieap液滴の関係、(2)Mieap液滴内の構成分子の解明、(3)生理的Mieap液滴の可視化、(4)Mieap液滴の誘導分子の同定、に関して研究を進める。これまでの成果として、生細胞イメージング解析により、Mieapタンパク質の比較的限定されたN末端領域にカルジオリピン代謝酵素が結合し代謝反応を促進している可能性と、カルジオリピン代謝酵素とMieapタンパク質のN末端領域の結合には、ある種の介在分子が存在している可能性を明らかにした。今後はこれまでの解析に加え、C末端領域と脂質の結合に関して解析を進める予定である。
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