研究課題
細菌感染症は世界共通の問題である。医療現場で問題となっている細菌の病原性や薬剤耐性因子の詳細な解析は進んでいるが、『本病原性細菌は今後どのように進化し医療上の問題を引き起こす可能性があるのか?』といった未来予測に対する科学的検証は行われておらず、本評価系も存在しない。これらの学術的問いに応えるべき、本研究では遺伝子変異スピードを加速度的に増加させた病原性細菌の生体内適応進化モデルを構築し、病原性細菌の病原性や多剤耐性化の進化様式を明らかにすることを目的とする。今年度は臨床検体から肺炎桿菌を分離・同定し収集した。また、収集した臨床分離株の薬剤感受性試験および血清感受性試験を行った。加えて、これらの菌株からDNAを抽出し、抽出したDNAを用いてDNAライブラリーを作製した。作製したDNAライブラリーを次世代シークエンサーで解析し、各菌株のゲノム情報を得た。得られたゲノム配列を用いてゲノム解析を行いMLST型、莢膜型、薬剤耐性遺伝子の同定を行った。上記から臨床上問題となり得る肺炎桿菌臨床分離株を選択した。選択した臨床分離株を親株として、相同組替え法またはPORTMAGE法を用いてDNA修復遺伝子であるmutS 欠損株(=DNA修復遺伝子機能欠損株)を作製した。リファンピシンアッセイ(リファンピシン添加培地でのリファンピシン耐性変異株の出現頻度の測定)の結果、作製したmutS欠損株は親株に比較し800倍以上の高い変異率を有することが確認できた。本株を用いて次年度以降の評価を行う。
2: おおむね順調に進展している
当初の実験計画どおり全ての内容を遂行できたため。
肺炎桿菌臨床分離株およびDNA修復遺伝子機能欠損株を用いた生体内環境下での遺伝的進化と適応性の評価>生体内環境下を模擬した実験系を構築する。本研究では肺炎桿菌の侵襲性を病原性の進化として評価することとし、血液内および抗菌薬存在下を模擬する。臨床分離株の一部を用いた実験は。確立した各生体内環境を模擬した実験系で菌株を継代培養し、培養開始時と継代培養終了後の菌株ゲノム用いて全ゲノム解析し変異遺伝子数および変異が起きた遺伝子部位の解析を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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