研究課題
これまで、病原体感染に対する治療法の主体は抗菌薬や抗ウイルス薬により担われてきた。これらの薬剤は感染症の発生件数の低減に多大な貢献を果たした一方、それぞれの薬剤により対象微生物が限定的であり、新興・再興感染症への迅速な対応は困難であった。それに対し、宿主の免疫機能を賦活化する「宿主志向型治療」が提唱されているが、過剰炎症などの副作用が問題となっている。CD4 T細胞は獲得免疫応答に必須のリンパ球であるが、我々は同細胞中に、定常状態下において自己抗原認識依存的に産生され、病原体感染時には自然免疫的に機能する新規「MP細胞」を報告した。さらに、MP細胞がMP1、MP17などの複数のサブセットからなる可能性についても見出した。一方、MP細胞の持つ自己抗原反応性から、その過剰活性化により自己免疫疾患を発症する可能性も指摘されている。以上より、MP細胞の適切な人為的制御により、炎症副作用を最小化した新たな感染症治療戦略「免疫賦活化治療」を提起できるものと考えられる。そこで本研究では、MP細胞の質的特異性、自己免疫活性、感染防御機能を明らかにすることを目的とした。研究の結果、MP細胞の鑑別マーカーとしてCD127、Sca1、Bcl2を同定し、また前者二者マーカーによってMP細胞自体が4群に分類されることを見出した(Front Immunol 2022)。また、これらMP 4分画のうち、CD127(hi) Sca1(hi)細胞がMP1に相当し自然免疫機能の主軸を担うこと、一方で同分画は免疫不全マウスにおいてIL-12依存的に腸炎を惹起しうる潜在性を有することが判明した。以上より、マウスMP1サブセットの表現型や免疫学的機能が明らかになった。今後、同分画の存在をヒトにおいても検証することで、新規「免疫賦活化治療」(JMA J 2022)の創出につながるものと期待される。
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臨床免疫・アレルギー科 (科学評論社)
巻: 80 ページ: 279-285