研究課題/領域番号 |
22K19422
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 昌平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 細胞分化 / 遺伝子発現制御 / エピゲノム / 転写因子 |
研究実績の概要 |
1.TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明:これまでに、iTreg分化系を用い、TCR-mTORC1シグナルがDNA脱メチル化酵素TET2/3のタンパク質レベルでの発現を促進することによりTreg固有のエピゲノム(Foxp3遺伝子座のTSDR領域のDNA脱メチル化)を誘導することを見いだした。本年度、TCR-mTORC1シグナルによるTET2/3タンパク質発現制御機構を解析し、TET2/3タンパク質の分解を抑制するのではなく、mRNAの翻訳を促進することを明らかにした。また、CD4-Cre Tg. Tet2 flox. Tet3 floxマウスから単離したナイーブCD4 T細胞を用いることで、TET2とTET3の総量に応じてTSDRの脱メチル化を促進することを明らかにした。 2.Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析:昨年度、Snrpnプロモーターを用いたTSDRレポーターマウスを作製したが、GFP発現が見られなかった。そこで、Tregでも作動するSnrpn以外の刷り込み遺伝子のプロモーターを探索した結果、Kcnq1ot1遺伝子がTregで高く発現し、そのプロモーター領域がTregでopenになっていることがわかった。そこで、この遺伝子に着目し、そのプロモーターが実際にTregで作動するか、Treg細胞においてレトロウイルスベクターを用いたレポーターアッセイを行った。その結果、期待に反して、Kcnq1ot1プロモーターはSnrprnプロモーター同様、TSDRの有無に関わらずレポーター遺伝子(GFP)の発現をdriveしなかったことから、このプロモーターもレポーターマウス作製に用いるプロモーターとしては不適切であると判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明に関しては、TCR-mTORC1シグナルがTET2とTET3の発現を翻訳レベルで促進することを明確にでき、現在論文作成を進めている。Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析に関しては、適切な刷り込み遺伝子のプロモーターを探索している段階であるが、これまでのところTregで働くプロモーターは見つけられていない。明確な結論が得られたという点ではこのプロジェクトを前進させることができたが、当初の目的を果たすことができず、引き続きプロモーター探索を続ける。以上、本研究は全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明に関しては、論文化を進める。また、in vitro分化系において全ゲノムレベルでのDNAメチル化解析(EM-seq)とATAC-seq解析を行い、強く持続的なTCRシグナルに依存して脱メチル化されるゲノム領域を同定する。そして、その領域にエンリッチしている転写因子結合モチーフを検索することにより、TSDRを含む脱メチル化領域にTET2/3をリクルートする転写因子を同定し機能解析を進める。また、in vitro系を用いてこれまで明らかにしたTCR-mTORC1-TET2/3依存的TSDR脱メチル化メカニズムが生体内におけるTreg分化においても働いているか、T細胞特異的Raptor欠損マウスを用いて詳細に検討を進める。Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析に関しては、引き続きプロモーター探索を続ける。Foxp3プロモーターに着目して解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成費用が必要になった。また、加えて、TSDRを含む特定のゲノム領域にTET2/3をリクルートする転写因子を同定するために、EM-seq解析とATAC-seq解析を行う必要が出てきた。また、SnrpnプロモーターやKcnq1ot1プロモーターが目論み通りにはTregで作動しなかったことから、新たにレポーターを探索する必要が出てきた。これらの理由により、次年度に予算をまわす必要が出てきた。次年度は、論文化費用、EM-seq解析とATAC-seq解析費用、プロモーターレポーターアッセイ費用を中心に予算を執行する。
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