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2023 年度 実施状況報告書

障害後の肝臓に現れる特殊な胆管細胞が線維化および発癌に寄与する可能性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 22K19423
研究機関東京大学

研究代表者

伊藤 暢  東京大学, 定量生命科学研究所, 協力研究員 (50396917)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワード肝臓 / 胆管 / 組織リモデリング / 線維化 / 発癌
研究実績の概要

慢性的な障害をうけた肝臓では、組織の線維化を起点として肝硬変、肝発癌へと病態が進行する。線維化はしばしば、病因の除去により障害自体が解消されたのちでも残存し、肝機能の回復不全や将来的な発癌をもたらす悪因となると考えられている。しかし、肝線維化の不可逆性がもたらされるメカニズムや、線維化と発癌とを結びつける要因については不明である。我々は最近、マウスモデルでの解析から、肝臓の障害部位へと増生した胆管組織に由来する特殊な細胞(RemBEC)が障害からの回復期に出現し、コラーゲン線維を産生・蓄積することを示唆するデータを得た。本研究課題では、こうした障害後の肝臓に現れる特殊な胆管細胞が線維化の不可逆性に寄与する可能性や、将来的な肝発癌の起源となりうる可能性について、マウスモデルでの細胞系譜解析や細胞除去実験等の解析手法をもちいることで検証し、肝疾患の病態の解明へと貢献することを目的とする。
2023年度には前年度に引き続き、遺伝的手法によりRemBEC特異的に蛍光レポータータンパク質やジフテリア毒素受容体(DTR)遺伝子を発現させるためのRemBEC特異的マーカー遺伝子の探索を行った。これまで得られていた複数の候補遺伝子を中心に詳細な検討を進めたが、期待するような特異性と発現誘導効率をもたらすものは得られていない。別の方策として、組換えAAVベクターによるマウス肝臓への遺伝子導入系をもちいることで、マーカー遺伝子非依存的にRemBECでの遺伝子発現・改変を誘導する系の構築にも取り組んだ。これらと並行して、肝内胆管の増殖や維持に関連するシグナル伝達経路を特異的に阻害する薬剤をもちいることで、RemBECの出現や動態にどのような影響が認められるかを検討した。こうした薬剤の投与によりRemBECの出現頻度が低下し、これに伴い肝線維化の病態が抑制されることを示唆するデータを得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

RemBEC特異的に発現するマーカー遺伝子の同定に関して、期待された特性を有するものの同定にはいたっておらず、当初の想定通りには進捗していない。一方で、薬剤投与にもとづくRemBEC阻害の系をもちいるという別の方策によりRemBECと肝線維化との関連を示唆するデータを得ることに成功しており、今後の研究の進展により、肝疾患の病態におけるRemBECの寄与を明らかにするという当初の目的を達成可能と考えている。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、組換えAAVベクター等をもちいたマウス肝臓への遺伝子導入系をもちいることで、マーカー遺伝子非依存的にRemBECでの遺伝子発現・改変を誘導する系の構築を試みる。また、すでに胆管の増殖や維持に関わるシグナル伝達経路を阻害する薬剤をもちいることでRemBECと肝線維化との関連を示唆するデータを得られていることから、こうした薬剤投与にもとづくRemBEC阻害の系をもちいた解析に重点的に取り組むことで、RemBECの肝線維化や肝発癌への寄与についての検討を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

RemBEC特異的に発現するマーカー遺伝子の同定に当初の想定よりも時間を要したことから、これを用いた解析系の構築のための経費を次年度に使用することとなった。
次年度(令和6年度)には、マーカー遺伝子非依存的なRemBEC解析系の構築と、薬剤投与にもとづくRemBEC阻害の系をもちいた肝線維化および肝発癌過程の解析を重点的に進めるために経費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Analysis of distribution, collection, and confirmation of capacity dependency of small extracellular vesicles toward a therapy for liver cirrhosis2023

    • 著者名/発表者名
      Takeda Nobutaka、Tsuchiya Atsunori、Mito Masaki、Natsui Kazuki、Natusi Yui、Koseki Yohei、Tomiyoshi Kei、Yamazaki Fusako、Yoshida Yuki、Abe Hiroyuki、Sano Masayuki、Kido Taketomo、Yoshioka Yusuke、Kikuta Junichi、Itoh Tohru、Nishimura Ken、Ishii Masaru、Ochiya Takahiro、Miyajima Atsushi、Terai Shuji
    • 雑誌名

      Inflammation and Regeneration

      巻: 43 ページ: 48

    • DOI

      10.1186/s41232-023-00299-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of a high throughput system to screen compounds that revert the activated hepatic stellate cells to a quiescent-like state2023

    • 著者名/発表者名
      Nakano Yasuhiro、Itoh Tohru、Tanaka Minoru、Miyajima Atsushi、Kido Taketomo
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2023.11.01.564270

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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