研究実績の概要 |
炎症は最も基礎的な生命現象であり長く研究がなされてきた。しかしながら、現代においても全世界の死因の約20%が敗血症に関連している。また、最近では免疫を人為的に活性化させることで癌などを治療する様々な免疫療法が臨床応用されているが、これらの治療法では副作用として時に重篤な全身炎症を伴うことが知られている。このように、全身的な炎症の制御は現代においても困難であり、炎症メカニズムのさらなる解明が求められている。好中球や単球といった自然免疫細胞は感染症の早期において炎症性サイトカインの重要な産生源となる。これらの細胞は短命であることから造血系の影響を強く受け、感染時には自然免疫細胞産生に特化した特別な造血応答(Emergency myelopoiesis, EM)が誘導されることで自然免疫が強化される。本研究では、一般的に炎症抑制的なサイトカインとして知られているIL-10が、炎症促進性サイトカインであるIL-1βと協調的に働き、造血前駆細胞の生存や自然免疫細胞産生を促進させ、EMを強化することを明らかにした。さらに、このIL-10依存的なEMの強化は実際の感染症における自然免疫応答を高め、病原体排除を加速させることを見出した。以上の結 果はJournal of Experimental Medicine誌に掲載され、同誌の「JEM Immunology collection 2023」にも選出されている。また、第51回日本免疫学会学術集会シンポジウムや日本生化学会のシンポジウムにおいて成果が発表された。
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